52.＿＿ ページ17
.
「分からんけど、次乗らんと、」
「ご飯行くって約束してくれるなら乗るわ」
「ああ、出た、永見のそういうの！そうやってうまいこと誘導させられんねん！」
「どうするん？答えへんかったら、僕乗らんで」
そんな、子どもみたいな。
なんで私のせいなのか。で、それで何故ご飯に行くという話になるのか。
説明が無さすぎて分からない。
「何でもかんでも、永見の言うこと聞くって思ってたら大間違いやで」
「そうは思ってないけど、」
「なら、変な言い回しで困らせんといてよ。乗らなかったら劇場にも芸人にも、お客さんにも迷惑かかるやろ？そんなこと忘れる永見は嫌い」
そう言うと、永見の眉毛が下がった。
分からん…なんでそんな、かなしそうな顔するん…。
「私のせいなら、ごめんなさい。ちゃんと持ってきたから、許して？」
「……」
「お礼とかも要らんからさ…」
「…Aはよく分からん。僕のためにここまで来てくれんのに、なんで僕がお礼したいって言ったら拒むん？昨日もそうやけど」
「そ、それは……その、」
自分でも気持ち悪いと思うけど、複雑なんだ。それをうまく説明することはできない。
おろおろしていると、ゆっくりと新幹線がホームに入ってきた。公共機関だ、止まってくれるわけがない。
「そういう話をAとしたいから、ご飯行かせてください」
「…あの、うん、はい」
永見が怒っている。そりゃそうだ、こんなに迷惑をかけて…。
恐る恐る永見を見ると、ふっと笑って、停車した新幹線の中に入っていった。扉の前でこちらを向いて、大きな手で"こっちに来い"とジェスチャーを送られる。急いで駆け寄った。
「僕、Aに必死かも」
そんな言葉を残して、新幹線の扉は閉まる。
「え、？」
新幹線はどんどん遠くなる。立っているところが揺れて、でもそれ以上に脳が揺れている。
永見が必死って、何が…？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
里佳子(プロフ) - 夏子さん» 初めまして。こちらこそ、そんな風に言っていただけるなんて…嬉しい限りです。ありがとうございます！！長編が終了しましたので、ちょこちょこ短編を書く予定です。見て頂けると幸いです！ (10月5日 16時) (
レス) id: 9634fe61f2 (このIDを非表示/違反報告)
夏子 - 初めまして。完結おめでとうございます。完結を嬉しく思うとともに寂しくもあります。言葉や雰囲気が綺麗で、それでいて少し苦く、とても引き込まれる素敵な作品で大好きです。また里佳子様のお話が読めることを願っています。お身体ご自愛くださいませ。 (10月4日 22時) (レス) id: 17842af8c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：里佳子 | 作成日時：2023年7月20日 23時
