20 ページ21
.
「まさか、本当に俺と食事してくれるなんて思わなかった」
「せっかくのお誘いでしたので」
綺麗な双眼を細めて、満足そうにワイングラスを傾けた幸村さん。断れないようさっさと予約を済ませていたのはどこのどいつだ。
大きなお皿にちょこんと置かれたステーキをひと口。近所のスーパーに売っているお肉とは、たぶん、絶対違うんだろうな。
「…、あの4人とはいつもどこで食べてるの?」
「事務所の近くの中華料理屋だったり、韓国料理屋だったり、個室のある居酒屋とかですかね」
「へー、今度俺も連れて行ってよ」
「是非、機会があれば」
どうも続かない会話に、居心地の悪さを感じてしまう。しかし、そう思っているのは私だけなのか、幸村さんは至って普通に食事を楽しんでいるようだった。
残り少ないワインをちびちびと飲んで、なにを考えているのかわからない彼の様子を窺った。
「彼とは…、仁王とは、随分仲が良いようだね」
「え?」
「いや、別に大した意味はないんだ。ただ純粋に、仲良しだなと思っただけ」
嘘つけ。
大きく跳ねた心臓。別に疚しいことなんてないのに、自分の中にしまわれている気持ちが先走ってしまっていた。
幸村さんは特に気にする様子もなく、固まっていた私と目が合うとにこりと微笑んだ。
「仲良くなることはいいことだ。けど、彼はアイドルで、君はただのマネージャーに過ぎない」
「…、なにが言いたいんですか」
「いいや、我が社の人気アイドルとそのマネージャーの心配をしているだけだよ」
やっぱり、私はこの人のことが心底苦手である。
全てを見透かしているような瞳も、能面のような笑みを浮かべる整った顔も、なにを考えているかわからない頭も。
「君が、仁王に対してどんな感情を抱いているかはわからないけど、きっと彼は、君に対してそういう感情を抱いている」
何もかも知っているような口ぶり。
「それでも、君はマネージャーだ。彼らを支え、あらゆる災難を出来るだけ回避しなくてはいけない」
「分かっています」
「もちろん、プライベートを持ち込むのは持っての他。メディアの良い餌食になってしまうよ」
随分と諄い言い回しに溜息がでかけた。彼の言っていることはもっともであった。が、その言葉をそのまま受け入れたくはないと思う自分がいた。
37人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗昧(プロフ) - 悠莉さん» 私欲だけで書いている物語を楽しんでいただけて嬉しいです。ありがとうございます^ ^ (2020年5月2日 18時) (レス) id: 12922a096f (このIDを非表示/違反報告)
悠莉(プロフ) - →ですが、青い鳥に書くのなら△△さんみたいに書くだろうなーと想像しながら読んでいました!とにかくみんなかわいいです!これからも更新頑張ってください!楽しみに待っています! (2020年5月2日 5時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
悠莉(プロフ) - 初コメ失礼します!立海ヤング漢のアイドルパロ、いつもとっても楽しく読んでいます!マネージャーなんて羨ましい!と思いながら読んでいたので□□さんに共感しました!むしろ私の気持ちそのものです!→ (2020年5月2日 5時) (レス) id: 5c790ea34a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紗昧 | 作成日時:2020年4月27日 18時