【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる10 (ページ28)

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おめかしバースデー3話ハッピーバースデーページ28

「好きな食べ物を教えてください」
「パイ料理ね。アップルパイとかの甘い物系も好きだし、パイシチューとかの食事系も好きよ。あのサクサク感がよくて、よく食べるの」
「逆に嫌いな食べ物は？」
「あー、特にないけど……強いて言うなら、味が濃い料理ね」

そういうAの顔はどことなく悪い。
何かまずいことでも聞いたのだろうか、と男子生徒は不安になった。

「私の家族は掃除にも服装にも模様替えでも一々口を出す人たちでね……特に料理の時は最悪よ。食材の切り方、厚揚げや玉子焼きの焼き色、味付け、食器の柄、盛り付け、並べる位置……そういうのを神経質に気にする人たちだったの」
「そ、それは……大変ですね」

途中、聞き慣れない料理が出てきたが、恐らく彼女の故郷の料理なのだろう。

「特に味付けには厳しくてね。ちょっと味が濃かったり薄かったりすると、シェフを呼んで何時間も説教するのよ。そのせいで味の濃い食べ物があまり食べられないのよ」
「ジャンクフードとかもダメですか？」
「ジャンクフードね……あれはまだ平気だけど、それ以外はあんまり。正直に言うと、食堂の料理もちょっと味が濃くて慣れるのが大変だったわ」
「そうだったんですね……」
「でも今はもう大丈夫よ。あれはあれで、未知の体験みたいで楽しかったわ」

苦い思い出があっても、Aは笑みを絶やさない。
それは家の指導の賜物なのか、あるいは彼女が身に付けた処世術なのか……男子生徒にはどっちなのかわからないが、それでも今の彼女は本心から楽しんでいるように見えた。

名残り惜しいけれど、これでインタビューは終了。
短い間だが、唯一の女子生徒と会話できて満足だ。

「色々とお話を聞かせていただきありがとうございました。改めておめでどうございます」

締めくくりにそう言うと、Aは嬉しそうにまた微笑んだ。