＊ ページ20
アズール先輩は静かに語る。
彼にとって過去は苦しいもので、忘れたいと消し去りと思う気持ちはわかる。
だけど、未だ自分が大した存在ではないと思い込んでいる彼に、私は平然と答える。
「他人から能力を奪わなくてもあなたは充分凄いですよ」
「え……？」
「あの学園長を困らせた、稀代な努力家よ。あなたは」
「努力……僕が？」
その返事は予想外だったのか、アズール先輩は目を丸くするも、すぐに笑みを浮べた。
「……ふっ。勝手に美談にするのはやめていただきますか？僕はただ、僕をバカにしたヤツらを見返してやりたかっただけですから」
「そうですか。……ま、悪徳商法についてはまだ許しませんけどね」
「ぐっ……あなたも意外と根に持ちますね」
私の一言にアズール先輩は苦い顔をするが、私はくすくすと笑うだけで何も言わない。
その時、グリムが泳ぐようにこっちにやってきた。
「A〜！向こうにでけぇ恐竜の骨みたいのが置いてあったんだゾ！」
「え、きょ、恐竜？」
「あれは恐竜ではなくシードラゴンという海のモンスターですね。海の魔女の洞窟の入口は、シードラゴンの骨で出来ていた……という言い伝えがあります」
そういえば、魔法史でそう習ったわね。
というか、この世界にも恐竜がいるのね。
「あっちに海の魔女の大釜のレプリカとかもあるよ」
「なにっ。海にも大釜があるのか」
「海ん中でどうやって温めんの？」
「えー、わかんね。アズール、説明してー」
「いいでしょう。僕のツアーガイド代は高くつきますよ」
「あ、じゃあ遠慮します」
「何故！？」
お金を取るガイド代を払うほど、私は無駄遣いをしません。
そう思って偉人の絵が並ぶ絵画のエリアの方に目を向けた時、目を見開いた。
偉人の絵の中でも特に目立つ真正面。
そこには海の魔女と並んで、別の魔女の絵画が飾られている。
そこに足を運び、目の前に立つ。
「これは……私……？」
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作者名：ブロッサム | 作成日時：2020年12月22日 15時
