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再び場面が変わり、あの部屋に変わる。
私の目の前にいたのは、顔を真っ赤にした母親。
そして――大粒の涙を流すローズハート先輩だった。
『なんてこと！自習をサボっただけでなく外で砂糖の塊を食べてくるなんて！あの2人がリドルを唆したのね。あんな悪い子たちと、二度と一緒に遊ぶことは許しません！』
「っ！ふざけるな！もとはと言えば、あなたのせいじゃない！！」
ローズハート先輩の自由を縛って、自分の理想を押しつけて。
あの2人はただ純粋に喜んでもらおうとしただけなのに。
それを踏み躙る権利が、お前なんかにあるものか！！
私の叫びはここでは無意味だとわかっていても、それでも叫ばずにいられなかった。
『ごめんなさい、お母様！もうしないから許して……！』
『お黙り！お前がルールを破るからいけないのよ。ああ、やっぱり自由時間なんて持たせるんじゃなかった。もっともっと完璧管理しなくては……』
泣きじゃくるローズハート先輩を無視して、ブツブツと呟く母親。
そこで場面は途切れたけれど……この日を境に、3人一緒で遊ぶことがなくなったことくらい理解できた。
――ルールを破れば、楽しい時間まで取り上げられてしまう。
――だからお母様の決めたルールは絶対に守らなきゃ。
――この街で一番優秀なお母様はいつでも正しいはずだから。
「そっか……だからあなたは、ルールを守ろうとしたのね」
ルールを破ったからこそ、あの大切な時間を取り上げられたからこそ。
一度味わった苦しみと悲しみを、他の誰にも味あわせたくなかった。
でも……あのやり方は間違っていた。恐怖で支配した先にあるのは、憎悪しかない独裁だけだ。
――でも……ねえ、ママ。
――何でだろう？
――何故だがとっても胸が苦しいんだ。
ローズハート先輩の心の声が、悲しいものに変わっていく。
――お誕生日だけでもいいから、いっぱいタルトが食べたい。
――お外でいっぱい遊びたい。
――もっといっぱいお友達が欲しいよ。
これは、ローズハート先輩の本音。
ずっとずっと、心の奥底で思っていた、彼の思い。
――教えて、ママ。
――どんなルールに従えば、この苦しさは消えるの？
その言葉を最後に、フィルムは消える。
四方が灰色に染まった空間で、私の目の前にいたのは――
「――ローズハート先輩」
膝を抱え、顔を埋めたローズハート先輩だった。
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作者名：ブロッサム | 作成日時：2020年11月9日 23時
