【ツイステ】魔に愛された少女はねじれた世界を生きる Event Story16 (ページ16)

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「そこに目を付けたのが、オレの先祖なんだってさ！」
「カリム先輩の？」
「アジーム家は、熱砂の国で初めて、船を使った海洋貿易を行った家だと言われています。当時は確かな海図もなかったとか。さぞ危険を伴った後悔だったでしょう」
「でもそれが、大成功したんだ！すっごいよなー！」
「さらにアジーム家は、国に走っていた河川を人工的な運河へと改良し、船路を開発」
「あ。それがさっきグリムが落ちた運河か」
「オレ様が落ちたは余計なんだゾ！！」
「さっきまで落ちてたのは事実でしょ」

そう言ってグリムを軽く小突いていると、ジャミル先輩は話を続ける。

「運河を足がかりにして、陸路も整備。内陸にも交易の幅を広げていきました。その結果、巨万の富を築き、熱砂の国を代表する名家となったんです」
「アジームの先祖には、先見の明があったということだな」
「アジーム家をはじめとする商家は、貿易の要としてこの『絹の街』の発展に尽力していきました。先進的なテクノロジーを積極的に取り入れて、人々が生活につかえるよう水環境を整えたんです。
　人が住むことに適さなかった砂漠地帯に、水が豊かになったことで人口が増え……交易が進み、富が蓄積され、街が豊かになり、そこから観光業も盛んになりました」
「今や世界中からツーリストが集まる、立派なリゾート地帯ってわけだね～」
「それでも、国土の大部分が、人間が暮らすには過酷な砂漠地帯なのは変わりません。生活をしていくには水が欠かせませんからね」

それはそうだ。
人間だけでなく、どの生物も水がなければ生きてはいけない。

「富裕層も庶民も運河に沿った街に集まり、やがて大きな都市となりました。貿易の主要な特産品が絹織物であったことから『絹の街』と名付けられたのです」
「熱砂の国の中でも、トップクラスの大きな街なんだぜ！」
「えぇ。首都ではありませんが、政治・経済の中心的な都市です」
「なるほど。そういうことだったのか。おばあさまに聞いた話だったのだが、熱砂の国が平和になってからは、噂を聞かなくなったのだろう。人間の営みは、時として僕の想像を超える速度で発展する。興味深いことだ」

ジャミル先輩の話を聞いて感心するツノ太郎。
熱砂の国の歴史を聞いてグリムはつまらなそうだったけど、私は学園ではあまり詳しく知られない話をきけてよかったと思えた。