怪盗は真摯に紳士である。 ページ11
夜。雲一つない綺麗な夜空にまんまるの満月が浮かび、これはお月見しない手はないだろうと私はタイラーを連れて公園に出掛けた。遊具のあるアスレチック広場というよりは芝生いっぱいの広いその公園は、私の絶好のお月見スポットだ。…お月見に限った話じゃないか、とにかくこの公園は、私のお気に入りなのである。
コンビニで温かいココアを二缶ととホッカイロを購入し、冷めてしまわないようにとコンビニを出て即座に開けたホッカイロをそれらを入れて渡されたビニール袋へと放り込む。現時点で既に肌寒いけれど、このココアを楽しむのは今じゃない。お気に入りの公園の、お気に入りのベンチで。
コンビニから公園への距離も五分くらいだけれど、ホット缶が冷めてしまうのは案外早い。足早に公園のベンチを目指し、到着した私はベンチに腰掛けて一息ついた。今はタイラーも私が編んだマフラーを首に巻いていて、振り落とさずにいてくれるその様が愛おしい。
気兼ねする必要がないからかタイラーは私の膝の上に顎を乗せて瞼を伏せる。楽な姿勢じゃないだろうに彼は人がいないところではこうするのがお気に入りだ。お待ちかねのココアのプルタブを開け、ゆっくりと、味わうように口に含む。少し熱いくらいのその温度がたまらない。
はあ、と息を吐き出して、私は夜空を見上げた。満月が明るすぎて星はあんまり見えないけれど、煌々とこちらを照らす大きな満月の存在は神秘的だ。何を考えるでもない、傍から見たら多分ぼーっとしているようにしか見えない。あながちでもない、ただ、満月を眺めているだけだから。
―――ふと、満月の前を何かが横切った気がした。それが何かもよくわからなくて、気のせいかな、と思い直して満月を眺める。…だけれどそれから少しして、もう一度何かが満月の前を横切る。本当に気のせいなのかな、と思い始める。飛行機にしては間隔が短すぎる、同じ飛行機が折り返してくる理由もない。
なんなんだろう、と目を凝らす。二度、三度。それは度々月の前を横切っていたのに、私にはなかなかそれが何か、判別が付かなかった。それがようやっとわかったのは五度目のことだ。その物体は少しずつこちらに近付いてきていて、そうして、物体のその色が“白”であることを理解した。
白い満月を背負っていたから色が混じって分かりにくかったのか、なんて自己完結をして、私の興味は、満月からその物体へと移る。そしてそれは、最終的には私の前に華麗に降り立ったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1245人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺんぎん。 - すきです。こうゆう小説すごく和みます (2022年2月27日 8時) (
レス) @page15 id: d21f01a898 (このIDを非表示/違反報告)
ケイ・ニコラス(プロフ) - とても好きです！続きが気になります！ (2021年7月4日 21時) (レス) id: c3f15b312b (このIDを非表示/違反報告)
杏 - なんだかすごく優しい小説でした。こうゆう小説がもっとあればいいのに。すごく好きです。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: 636a061378 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅(プロフ) - 明日も頑張ろう、と元気や癒しを頂きました。ありがとうございます。すごくすごく好きです。 (2018年3月5日 20時) (レス) id: c5e0d1202b (このIDを非表示/違反報告)
ゆめさみ - とっても癒されます＾＾ (2018年2月19日 0時) (レス) id: ec209772b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
