わたしは、ひどいおんなだ。 ページ8
「話を聞いてみるとホームレスだと仰るので…彼女は車を降りると言ったんですが、僕が放っておくことが出来なくて」
「あー……でも、昴さんが面倒を見ることはないんじゃ…保護施設とか」
「考えなかったわけじゃありませんが…拾ったくせにそれも薄情でしょう?」
…すごく義理堅い発言だなあ。その気持ちは嬉しいし、有り難いけれど。
「一先ず、数日は様子を見ますよ。その先のことはそれからでも遅くはないでしょう。」
「……まあ、昴さんが良いなら僕は構わないよ。新一兄ちゃんに伝えておくね」
話が丸く収まったようで良かった。秀一さんもコナンくんからは厚い信頼を勝ち取っているらしい。わたしはというと、昴の斜め後ろで立って控えていた。二人の話を邪魔するわけにはいかない。
………それにしても、と、わたしはそれとなく向こうにある扉に目を向ける。哀ちゃん、滅茶苦茶警戒してるなあ。扉越しでもびしびしと伝わってくる敵意。昴を疑っているからか、わたし自身も警戒の対象になっているらしい。
まあ、秀一さんがそれを甘んじて受け入れているならわたしから言うことは何もないけれど。早いとこお暇したほうが良いのかな、哀ちゃん疲れちゃうんじゃなかろうか。
「ねえ、お姉さんの名前は?」
「ん。一二三、ですよ。一二三A」
「Aさん。Aさんはどうして、一人で森の中でホームレスをしていたの?お父さんや、お母さんは?」
「、コナンくん、」
「…それはですね、」
咎めようとした昴を制し、わたしはコナンくんに目線を合わせるように屈み込む。無邪気な表情に隠された警戒心。まったく末恐ろしい人だと思う。
「わたしは捨てられてしまったんですよ、お父さんと、お母さんに。」
「、え……」
「元々、わたしの境遇はあまりいいものではありませんでした。多少ネグレクト気味だった、と言いますか、両親共々暴力癖のようなものがあったと言いますか。心無い言葉を浴びせられたこともありましたから、そう、なったときは…案外心は静かでしたね」
予感があった。予測が出来た。いずれこうなるんだろうと、わたしは心のどこかで、既に諦めていた。
コナンくんが傷ついたような表情を見せる。困ったように苦笑して、わたしは彼の頭を撫でた。
「ごめんなさい、少し、難しい話をしてしまいましたね。そう……遠い国へ、お仕事に行ってしまったんですよ。ええ、わたしがいては、向かえない場所でしたから。」
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