お邪魔します、工藤邸 ページ5
結局宝石は拾い集めてケースに入れられた。誠に遺憾です。秀一さん結構頑固。
秀一さんの運転で助手席に乗ったまま車が走る。どこに行くのか、ということは別段質問しなかった。例えば、向かう先が研究所だとしても。だったらばわたしは逃げるだけなのだし。
……元より秀一さんがそういうことをするとも思えないし。
しばらく車に揺られていると、辿り着いたのは件の工藤邸だった。まさかそのままここに帰ってくるとは…しかも車もそのままで。変装だってしてないし。
「着いたぞ。ここが今の、俺の家だ」
「………豪邸ですね」
「ふ……決して俺の持ち家じゃあないがな。」
エンジンを切った彼に降りるぞ、と促され、わたしもそれに応じて車を降りる。…危険は、ない。年がら年中外に出るにも変装しなきゃいけない、というわけでもないらしい。
さすがドジン率いる黒の組織。優秀なんだかよく分からない組織だ。
車の鍵を閉めた彼の後ろをついて行くと、鍵を回して玄関を開ける。本当に世話になっちゃって良いのだろうかと不安に思うものの、ええいままよと工藤邸に足を踏み入れた。いけない、いくらなんでも鍵は掛けないと。
「ここ、秀一さんの家じゃないんですか？」
「ああ、借家だ。金を払ってるわけでもないが」
「………幾らお金払えばこんなとこ借りれるんですかね」
「……あまり考えたくはないな」
うっそだぁ、絶対お金持ってるよ秀一さん。
主に物欲なくてお金持て余してそう。あくまでイメージだけど。
「ふっわぁ……！ひろっ」
「少しここで待っていてくれ。大家に挨拶に行くのに準備をする」
「はぁい」
秀一さんはわたしの頭を撫で、場を離れて一階の廊下、そこにある扉を潜って閉めた。
……大家ってコナンくん…新一くんのことかな。すごいニュアンス。間違ってはいないけどそういう言い方してるの初めて見た。
「………うわ、これも洋書だ」
普通の推理小説だって読めないけどそれ以前に洋書多すぎ。なんで工藤一家ってそんなに海外に精通してるの？それがデフォルトなの？
…うう……この家暇潰しできるようなものが何もない…本ばっかりだよ！本なんか普段読まねーですよ！日本語ならかろうじて読めますけど英語とか論外ですよ！肉体強化特化型なめるない！
ぶ−、と一人むすくれながらきょろ、と辺りを見回すと、ふと秀一さんが車から持ってきた荷物に目がいく。その中には丁寧にケースに入れられたわたしの涙があった。
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