わたしのはなし ページ3
助手席に座るように促され、わたしは言われるまま後部座席から助手席へと移る。扉を閉めて、わたしは話し始めた。
「………まず、大前提として。わたしは、厳密に言うと人間ではありません」
「…ふむ?」
「植物や、鉱物。そして動物…その三点の性質を持ち合わせた、研究所で生まれた実験体ですよ。」
「……実験体」
「ええ。わたしの目が夜であってもよく見えているのは、その影響」
「…………」
「基本的に、わたしには食事そのものが必要ありません。何故か分かりますか?」
「……光合成か」
「その通り。森の中にいても怪我をしていないのは、わたしに鉱物質があるからです。」
森の中で過ごすことそのものを、苦だと思ったことはありません。
「光があれば生き存えることが出来ます。水があれば一日中でも動くことが出来ます。…ふふ、これ以上にエコロジカルな存在は他にない」
「…どうして君は、実験体だなんてものに?」
「売られたからですよ、両親に。…わたしの体は、もうこれ以上成長しない。だって、言っていたんです。研究所の人間が。“ようやっと完成した”って」
わたしのこの身体はまだまだ幼くて、わたしの頭はお世辞にも良いとは言えなくて。ただただ、本能のままに生きるだけの、わたしを。
「………わたしはもう完成しているんですって、おにーさん。“最高傑作だ”って、彼らは大層喜んでいました。…最高だなんてとんでもない。わたしの、この手は。或いは、人を殺めてしまうかもしれないのに」
最低ですよ。最低の、出来損ないです。
「しかも奴ら、完成したからってもう用無しだと言わんばかりに、わたしを手放したんです。…わたしにどうしろって言うんですか。わたしはどうしたらいいんですか!」
「A、落ち着け。」
「良いことを教えてあげますよ、おにいさん。わたしの名字の一二三は、123番。わたしに付けられた番号です。親に捨てられたわたしは、皮肉交じりにそう名乗ることにしたんです!」
「もういい!!!」
張り上げた声に遮られて、わたしは黙り込む。ああ、ああ、感情が高ぶっている。今の今まで我慢していたものが、溢れ出してきてしまっている。
このままは、やばい。
「……どうせあなただってわたしのことを嫌いになる。わたしのことを嫌いになって、怖がって、わたしのことを、捨て、」
ぐいと腕が引かれて、強く抱き込まれる。突然のことに言葉が詰まった。
「……止せと言っているだろう」
456人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ