守る、わたしはその為の。 ページ13
秀一さんの意外な一面を認識しつつ、彼と並んで座ってまったりとホットミルクを飲む。彼はというと案外簡単に読書を切り上げていて、秀一さんも暇潰しだったのかな、なんて。
大した話はしていない。この小説の内容は理解しているのか、とか、いやそんなまさか、とか、そんなあさーいことだ。
「元々わたしって直感で動くタイプですから、頭が良い訳じゃないんですよ。せいぜい文字を追いかける程度で、内容までは」
「……なら、今度は一緒に小説を読んでみようか」
「あは、1ページ読み進めるのにどれだけかかるかわかりませんよ?」
「構わんさ。どうせ空きの時間を持て余していたんだ」
「休みぐらい休んだほうが良いと思うんですがねえ」
「本を読んでいる程度じゃ動いている内に入らんよ」
するりと紡がれる次の約束。ああ、日常ってこんなものだったか、と少し感じ入ってしまう。舌の上にはほんのりと甘いホットミルク。傍らには優しい優しいお兄さん。
幸せってこんな感じだったか、と、現金にもそんなことを考えた。まるでわたしの兄が出来たみたいだ。
「……久しぶりだよ」
「え?」
「こんなに落ち着いていられるのは、もう何年ぶりか……組織に関わってからは、忙しない日々を送っていたからな」
「……組織、ですか?」
「俺が身を隠さなければならなくなった“諸事情”だ。…そうだな、聞くばかりではなく、俺も教えてやらねばならん」
端から話すつもりはあった、のか。彼は服のポケットから、バッチを取り出した。
差し出すその手に釣られて手を出せば、掌の上にそのバッチが置かれる。
「FBI捜査官。それが俺の仕事だ」
「えふびーあい…」
「警察組織のひとつ、と考えてくれていい。独立した組織が幾つかあるんだ」
「ほむ」
「その仕事で俺は、ある組織を追っているんだ。正式名称も分からない、ただ…俺達は黒の組織、黒尽くめの組織、と、そう呼んでいる」
「………では、秀一さんはそいつらに、命を狙われていると。」
「ああ、煙たがられているのは確かだろうな。出来ることなら葬りたい、とも、思っているはずだ」
「わたしがそうはさせませんがね」
「ふ……頼もしい限りだ。………目付きが悪いぞ、A」
「んんむ、すいません」
そう、黒の組織という奴らが凶悪であり巨悪であることはわたしも知っている。なにかを壊すことを厭いもしない、躊躇いのない奴らだ。
……秀一さんを狙おうと、殺そうというなら。わたしが。
大人だって、苦しいものは苦しい。→←(意外と甘党なのかしら)
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