ライモンシティ 3 ページ38
ライモンシティにたどり着いてすぐだった。パパからの叱責の電話と、連れ戻しに行く、という簡単な六文字が綴られたメールが届いたのは。
雑踏の傍ら、建物の隙間。あたしは日陰にいて、Aは眩い太陽に照らされている。
建物の影を境界線に、あたしとAは立ち尽くしていた。Aの宝石のようにきらめく瞳はあたしの言葉を未だ咀嚼できずに、目を瞬かせている。その表情の差は微々たるものだが、仏頂面のAにすれば大層な動揺に見えた。瞳の中にうつるあたしは、酷く不器用な笑顔を浮かべている。いたたまれなくて、目を逸らした。
旅を知る度、自分が嫌になった。
あたしは生来器用な方ではない。むしろ物事を咀嚼するのに人より時間がかかるほうで、チェレンとAが足を進めていく度、劣等感を知らされた。
あたしの前を早足でかけていく二人が、着実に届かない場所に行ってしまうくらいなら、そもそも旅なんてなかったことにしよう。
充分満喫したよね、あたし。もう帰らなくちゃね。
でもそれは失うものに目を背けた建前で、頑なにそれを受け入れない本音は心髄で痛いほどあたしの足をすくませる。
祝日の昼時、賑わいを見せるライモンシティの喧騒も、シャッターで締め切られたかのように耳は拾わない。あたしとAの間には、ぐったりとした暑さがあるだけ。うだうだと熱風が肌を燻して、汗が背筋をそろりと伝う。陽炎が遠方で揺らめいているのが目の淵に見えた。真夏の炎天の暑さも感じ取らなさそうなひんやりとしたAの大きな瞳が、じっと帽子の鍔ごしに葛藤を繰り返すあたしを、黙って見据えていた。かと思えば、くちびるがゆっくりと動く。
「…それでいいの？」
「……それでいいよう」
あたしは冴えない声色のまま、睫毛を俯かせた。いいわけないじゃん。嘘も方便、言い訳を並べるあたしに、不意に肩にAの手が触れて引き寄せられる。コツンと、ベレー帽とAの帽子のツバが触れた。
「嘘。どうして、そんなに泣きそうな顔してるの？」
その言葉は、あたしの一等弱い核心を突いた。
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はおはお(プロフ) - 第五世代からポケモン始めた民なのですごく嬉しいです(>_<)更新頑張ってください！ (2017年10月21日 18時) (
レス) id: 17860e1883 (このIDを非表示/違反報告)
玲美(プロフ) - 久しぶりに、笑ったよｗｗｗ暫く、笑いが止まんなかった（笑）面白かったから・・・更新、頑張ってね！← (2017年8月26日 21時) (レス) id: 94d50e8693 (このIDを非表示/違反報告)
凜華(プロフ) - 凄く面白いです！！更新楽しみにしてます！頑張って下さい。 (2016年12月10日 22時) (レス) id: dad73132cb (このIDを非表示/違反報告)
Soul - 頑張ってください！ (2016年8月18日 14時) (レス) id: b52c6c4105 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜（女） - 頑張れです (2016年1月5日 22時) (レス) id: 2bf8696fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一文字 | 作者ホームページ：
作成日時：2014年10月5日 22時
