04.バックミラーで絡む ページ5
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翔「どうぞ、鳴海様」
「…はっ？」
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そんなこんなでビルを出ると、既に目の前に黒塗りのベンツが止まっていて
運転席に座っていたーーー…、頭脳明晰王子様がバタンと扉を閉めて出てきて
後部座席の扉を開いて、私を見事にエスコートする。私が乗り込むと甘い微笑みを浮かべて、静かに扉を閉める。
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(…なんか。…〜〜〜っ…なんか)
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くすぐったいというか、慣れないというか…。
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うう、と広い車内にも慣れず俯いているとバタンと再び扉が閉まる音。
チラリと視線をあげると彼がシートベルトを着けて、アクセルを踏んだところだった。
静かに揺れを微塵にも感じさせないうまい運転で、街が動き出す。
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「…あ…あの」
翔「はい」
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沈黙は流石に気まずい。どうやら私の家は既に知っているようでなんの迷いもなく左折右折していく櫻井さんに話しかけてみたら
柔らかい物腰での返事が返ってきて、少しだけ気が緩む。
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「櫻井…さんは」
翔「はい」
「松本さんの部下さんですか？」
翔「部下…と言ったら、まあ部下ですけども。」
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信号が赤になって車が止まる。その時だった。
バックミラーを見ていた私と、バックミラーを見た櫻井さんが鏡越しに目があって
彼が妖艶に口元を緩ませた。
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翔「私は松本の秘書です」
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秘書。秘書。…秘書？
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「えっ、あの女の人は…」
翔「ああ、八木のことですか。八木は副社長の秘書ですね」
「あ…副社長さんの…」
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この人が、あの貴公子の秘書。
なんで絵に描いたような二人。
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こんな人が彼氏とかだったら、本当に幸せなんだろうなぁ…なんて思ってたら
快適な車の旅はあっという間に終わりを告げ
気がつけば窓の外は見慣れた家の前に止まっていた。
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横の扉が開いて、櫻井さんがどうぞと促してくれる。ありがとうございますと頭を下げて
ありがとうございました、とお礼を言うと「いえ」と彼が会釈をして。
それから
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翔「鳴海さん」
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ーーー…“鳴海様”
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