要らない子 91人 ページ46
あれから、ずっと考えていた。
今まで5年余り、最低で最悪な恥晒しだと思っていた大嫌いな裏切り者が、
兄弟を自分よりも大切にするような優しくて頑張り屋な妹だって言われても
まあ流石に直ぐには受け止められるわけがない。
でもそれでも信じようと思えたのは、母さんのあの目があったからだ。
Aは自分が守らなきゃいけないんだって、気付かせてくれた。
一松「うん……うん。やっぱり、Aの味方になろう」
1人呟くと、腰を上げた。
爪先は真っ直ぐに躊躇い無く、愛する妹の方へ。
たぶんいるであろう2階の部屋の前に立ち、中の様子をほんの少し伺った。
…いる。
ひとつ、落ち着かせるように息を付いて扉を開ける。
びくん、とAの方が跳ねた。
一松「…A」
A｢…あんだよ、お前かよ｣
あ、確かにやっぱ不自然だ。
なんだよ、こんなの………
見るのさえ辛いぐらい、悲しそうな目だ。
一松「いやもういいよ、そういうの」
A「は？」
一松「もういいから、分かってるから俺。十四松にも聞いたし母さんにも聞いた」
構えるように姿勢を変える。
ああもう、そんなに警戒しなくていいのに……
いや、させるような態度をとったのは俺らだった。
一松「知ってるから、Aが何隠してんのか、なんでいきなりあんな態度に変わったのか、ただ俺らのこと嫌いになったわけじゃないんだってこととか」
言葉を紡ぐごとに、戸惑った顔に変わっていく。
頼むから、もう1回、俺もお前のこと信じるから。
Aも、俺の事信じて。
一松「だから、お願いだから何があったのか教えて欲しい……散々虐められてきた奴に言われたって信じられないのはわかってるけど」
一松「またなんか企んでるんだろって考えるのは仕方ないけど」
────────────教えて、Aのこと
時間が止まったのかと思うほどの沈黙が続いた後、Aは顔を上げた。
A「正直、今あんたが何考えてんのかわかんない。どーせ騙してるんだろって思うし、その襖の向こうに兄貴達がいるんじゃないかなって疑うし」
A「でも、信じたい気持ちもあるよ。それでも騙されてても騙されてなくても、信じたくてもやっぱり言えない。一松兄さんがそう思ってくれてるかもしれないのは嬉しいけど」
言えない。何があっても。
ごめんね。とAはポツリと呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 986人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらたま - うぐっ...泣いてしまいました...。デカパンいいやつ...。あっ、おそ松推しです。 (2021年7月23日 11時) (
レス) id: 24987e1d85 (このIDを非表示/違反報告)
likk - デカパンいいやつ (2019年5月29日 18時) (レス) id: c9c05fe7f4 (このIDを非表示/違反報告)
絢斗 - 絢斗「ごめんね兄さん達…本当はあんなことしたくなかった…ッ担任の樋崎に言われたんだ。『兄弟を○す』って。ごめんね大切な兄さんたち。」 (2019年4月15日 17時) (レス) id: 936fc60342 (このIDを非表示/違反報告)
絢斗 - はーい絢斗本人だよ…。 ただ自分の名前を絢香→絢斗にしただけ。 ちょっとなんかこの小説読んでたら泣けてきた 応援してます。 頑張ってください (2019年4月15日 17時) (レス) id: 936fc60342 (このIDを非表示/違反報告)
しょうどうぶつ(プロフ) - yurizuさん» ぐはっ(ﾊﾞﾀ)←気にしないでください (2019年3月31日 21時) (レス) id: 6b43d9f71a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yurizu | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時：2017年4月2日 23時
