出久の回想 ページ36
出久が目覚めたのは雄英の保健室だった。
ぼんやりとした頭が消毒液の匂いで覚醒していく。
この手で殺す日が待ち遠しくて夜も眠れない!!
間違いなく、姉の顔、姉の声で発せられたその言葉に吐き気が催す。
ゆっくりとやりとりを思い出す。思い出さなければ。
緑「どう、して?」
震えた声で問われた彼女は恍惚の笑みを剥がすと底冷えするような冷たい声でいい放った。
『お前たちも、オールマイトも、同じ奴に糸繰されてるからだ。』
一瞬だった。
一澄が出久の胸元に入り込む。
『正義や、偽善!!』
ドゴッという鈍い音と共に出久は鳩尾に入った拳に崩れ落ちた。
カフッと痛々しいな呻きが聞こえる。
『それはいつの時代も一緒だった。
君たちは私達を悪と呼び潰すことを夢見て力を培ってきたように私たちもお前達を丁寧に殺してきたのさ。原理はシンプルなほど強いのだから。』
そうだ、僕は姉さんに殴られたのだ。
姉さんは確かに少し強引なところがあったけど、いつも僕を守ってくれていた。
手をあげるなんてもってのほかで、あり得なくてむしろ庇ってくれるくらいで。
だから僕は、姉さんが、そんな姉さんが大好きで、
どんなに悪い事をしても、どんなに恐ろしい事を言っても、どこかで信じてこれたのだ。
可愛い可愛い僕の姉さん。
優しくて、強くて、どこか抜けてるとこもあるけど。
僕の憧れの姉さん。
なんだかおかしい。
照れ臭いって言ってたのは僕の方なのに。
今じゃ僕は姉さんのことをこんなに思っているのに、姉さんは僕には見向きもしない。
彼女の興味の矛先は僕の中のワンフォーオールだ。
緑谷はゆっくりと立ち上がって、笑った。
おかしくて、悲しくて、訳がわからなくて、ただ笑うことしかできない。
訝しむような姉の顔を見据えて、心の底から出久は言葉を吐いた。
緑「あぁ、僕も、姉さんのことを想うと夜も眠れない!!」
彼女はゆっくりと距離を詰めると出久の頰を思い切り殴った。
出久は反動で飛ばされる。
『興が冷めた。今日のところは降りさせてもらおうか。どのみち、雄英の近くで暴れると厄介だからね。』
ゆっくりと消えてゆく姉の姿に手を伸ばす。
貴方は覚えちゃいないのだ。
その自分を殴った手で、いつか僕の頰を撫でて、微笑んだことを。
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かむかむ(プロフ) - Tyrant-unknownさん» リクエストありがとうございます!楽しんで貰えると嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2019年4月29日 23時) (レス) id: 09c547eef6 (このIDを非表示/違反報告)
Tyrant-unknown - お久しぶりです。またで申し訳ないですけどリクいいですか?弔くんと夢主ちゃんの恋人同士みたいなのがいいです。お願いします。名前が長ければTyrantでいいです。 (2019年4月29日 22時) (レス) id: f453f15264 (このIDを非表示/違反報告)
かむかむ(プロフ) - ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年4月4日 21時) (レス) id: 09c547eef6 (このIDを非表示/違反報告)
unknown - リクエスト受けてくださりありがとうございます。面白かったです。 (2019年4月4日 6時) (レス) id: f453f15264 (このIDを非表示/違反報告)
かむかむ(プロフ) - unknownさん» リクエストありがとうございます!楽しんで貰えると嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 09c547eef6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむかむ | 作成日時:2019年4月3日 0時