雨恋い【リヴァイ】 (ページ8)

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「…雨、」

いつもの夜の日課も、あともう少しで終わりにしようと思っていたところ、急に降り始めた雨に、これはタイミングが良いと言うのか悪いと言うのか、Aはなんとなく真剣に考えてしまう。

「…あと少し、」
「A」
「…あ、兵長…、」

まさかびしょ濡れになるまで走ろうなんて思ってないだろうな、と何も言わずとも伝わってくるリヴァイの表情に、Aは「ちょうど、終わりにしようと思っていたんです」と取り繕うように笑顔をつくった。

「…。お前の馬鹿真面目も、そこまでいくと病気だな」
「な、なんですかそれ。真面目な部下がいて、誇らしいところじゃないですか」
「お前のは、馬鹿、真面目だ」

バカバカと連呼されて落ち込むAだったが、昼間のことを怒っていると思っていた分拍子抜けして、安堵感から嬉しそうに表情をゆるませる。

「…、」
「兵長…？」

Aの笑顔を見て突然眉を寄せるリヴァイに、やはり怒っているのかと眉を下げたAは、「お、怒ってますか…？」と不安げにリヴァイを見つめる。

「…別に俺は、最初から怒ってねぇ」
「えっ、」

驚くAをよそに、Aに背を向けさっさと歩き出したリヴァイは、すぐに「行かないのか」とAを振り返り立ち止まる。

「い、行きます！」

怒ってないと分かった瞬間、自分に向けられるリヴァイの瞳に以前より柔らかさを感じる気がして、Aは隠すことなく嬉しそうな笑い声を漏らす。

「怒ってないっていうことは、昼間は、私を助けてくださったんですね」
「…ああ、危うく、万年片思いのモテないクソ野郎って、根も歯もない噂を立てられるところだったからな」
「すみません…でもっ、兵長はすごくモテますよ！新兵の何人かは、いつも兵長目当てじゃないですか！」

じゃあお前はどうなんだ、と聞こうとして、Aを困らせるだけかと口をつぐんだリヴァイは、「そういう奴は大抵、最初の壁外調査で死ぬ」と、あえて冷たく言い放つ。

「…、そうですね、」

何度経験しても、目の前で人が死ぬのは辛くて慣れなくて、そういうA自身も何度死にかけたか分からなくて、でもそれはきっと、人類最強と言われる目の前の人も同じで。

Aは真っ直ぐに前を向き歩くリヴァイの後ろ姿を見つめながら、もっともっと自分も強くなって、その重い荷物を少しでも肩代わりしてあげたいな、なんて、畏れ多くもそんなことを思ってしまった。