雨恋い【リヴァイ】 (ページ6)

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いつもと変わらない自分の手、もうそこにはない光の粒を見つめながら、リヴァイは大きく息を吐き、ぐしゃりと音を立てる書類のことなど気にもせず、重力に身を任せ机に突っ伏す。

「…、」

先程から、自分の非を責めるように何度も浮かんでは消えるAの泣き顔に、お前はもっと器用に生きられねぇのか、と髪をかき乱しながら顔を上げたリヴァイは、ふいに目に入ったいつもAが座るソファーに、そのまま自然と窓の外へと視線を移す。

「…晴れてやがる」

忌々しくも美しい星空を見つめながら、あの涙いっぱいに濡れた瞳も、月明かりに照らされればこんな風に綺麗なんだろうか、と考えて、リヴァイは自分のらしくなさすぎるその考えに、驚いて勢いよく立ち上がる。

「馬鹿か、お前は…、見えねぇのか、このクソ書類の山が」

自分に言い聞かせるようにそう呟いたリヴァイは、気分転換に紅茶でも淹れようとして、無意識のうちにAのお気に入り、そして自分のお気に入りでもある茶葉を避けて、違うものがないか探していることに気付く。

「…どうしちまったんだ、俺は…？」

その問いに答えるべき己の心は、自分自身でさえも理解ができない色んなもので溢れていて、諦めて寝てやろうと布団に寝転がってみても、鼻をかすめるいつもと違う匂いに、結局忘れようとしていた人間の顔が思い浮かんでしまう。

「…、走るか」

そう思い立ち起きあがろうとして、いやまだこの時間はAが走ってるじゃねぇか、とどうにも逃げ場のない自分の心に、ついには笑いさえ込みあげてきて、リヴァイはいよいよ俺も疲れが限界らしい、と無理やり目を瞑り、とにかく眠るんだと何度も深呼吸を繰り返した。