雨恋い【リヴァイ】 (ページ11)

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「…、」

心臓の音さえ聞こえてしまいそうな静けさの中、数秒か数十秒か、無言のまま見つめ合ったAとリヴァイは、紅茶が蒸し上がったことを知らせるタイマーの音に、お互い我に返り慌てて視線を逸らす。

「…あ、ありがとうございます」
「ああ、」

普段は音もなく置かれるティーカップが小さく音を立てて置かれるのを見て、Aはまさに穴があったら入りたいと心の中で頭を抱える。

「…飲まないのか」
「あっ、の、飲みます！」

急いで口に入れた紅茶がいつもと変わらず美味しくて、Aがほっとして思わず笑みを浮かべると、それに気付いたリヴァイもそっと口角を上げる。

「！」

リヴァイ本人は気付いていないのか、ほんのり慈愛の色の浮かぶ瞳で見つめられ顔に熱が集まるのを感じるAは、そういえばとてもよく覚えのあるその瞳は、いつから自分に向けられるようになったのだろうかと、唐突な疑問がAの頭の中を支配する。

(…最初、から…？)

気付いてしまえば最後、今まで怖い、怒っているのでは、と怯えていたその全てが彼の優しさだったと分かってしまって、Aはうるさいほどに高鳴る心臓が抑えきれなくなる。

「…A？」

今までずっと、こんなに優しく名前を呼ばれていたのかな？
こんなにずっと、気遣わしげな表情で兵長は私を見ていた？

「…、具合でも悪ぃのか？」

兵長の口から紡がれるのは、いつも自分を気遣い心配する言葉ばかりだったのに。

…どうして、今まで気付かないでいられたんだろう。