雨恋い【リヴァイ】 (ページ2)

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「し、失礼致します」
「ああ」

書類を片付けていた手を止めて席を立ったリヴァイに、びくりと肩を揺らしたAは所在なさげに視線をさまよわせて、浅い呼吸を繰り返す。

「…？座らねぇのか」
「あ、はっ、はい！」

挙動不審なAに着席を促して紅茶を用意したリヴァイは、部屋中に広がるお気に入りの茶葉の香りに、いい出来だと無意識のうちに口角が上がる。

「…あ、あの…、よくこうして、部下に紅茶を淹れたりするんですか…？」
「…俺がそんな、お優しい男に見えるか？」
「す、すみません」

明らかに怖がっているAに、「できたぞ、飲め」と追い討ちをかけるように凄むことしかできない自分に、リヴァイは小さく息を吐いたあと、気を取り直して香り高い紅茶を口に含む。

「…美味しい、」

まるでリヴァイの気持ちを代弁するかのようにそう言って瞳を細めたAは、「とってもいい香りですね」と柔らかな表情をリヴァイに向ける。

「…ああ、これは、北東部から取り寄せた茶葉で…」

リヴァイの口から紡がれる珍しく穏やかな声に、黒目がちな瞳を輝かせて何度もうなづくAは、「また飲めたらいいのに…」とその言葉も表情も無意識なのか、ゆっくりと笑みを深める。

「雨の日になら、また淹れてやる」
「…え？」
「…、身体を冷やして風邪でもひかれたら、後味が悪いからな」

また嫌な言い方をしてしまったとリヴァイが視線を上げると、「いいんですかっ！」と身を乗り出すAと目が合って、いつもきっちりと引き結ばれているリヴァイの唇が、驚きからかほんの少しの隙をみせる。

「雨の日って、身体冷えるし服が引っ付いて気持ち悪いから嫌いだったんですけど…、こんな素敵なご褒美がもらえるなら、好きになりそうです！」

あまりに素直なAの言葉に、毒気を抜かれたように「それは良かったな」と表情を柔らかくしたリヴァイに、Aは「明日も雨だといいですね」と、子供のように無邪気に笑ってみせた。