美少年 【嘴平伊之助】

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まるで伊之助の気持ちを汲んだかのように、早速次の日になってAは伊之助に会いに来た。


「伊之助、久しぶり」


どこかよそよそしく微笑んでそう言ったAは、「元気だった？」と伊之助の顔をのぞき込むようにして問いかける。


「…あ、ああ」


目を見て、話す。

爺さんに言われた言葉が頭の中に響いて、おもむろに猪の被り物に手をかけた伊之助は、そのまま素顔をさらしてAの黒曜石のような瞳を真っ直ぐに見つめる。


「…へ、」


大きく目を見開いて伊之助を見つめ返したAは、そう言ったきり口を半開きにさせて、予想外すぎる伊之助の美しい顔を隅から隅まで見つめる。


「…おい？」


訝しげに眉を寄せるその表情さえ一寸の隙もないほど美しくて、Aは思考という思考が動きを止めてしまい、ただ早鐘を打つ心臓が苦しくて痛いことしか分からなくなる。


「…え、綺麗…」


自分にはない、真っ白できめ細やかな肌。
まん丸でガラス玉のような愛らしい瞳。
凛と通った鼻筋に形の整った唇は、どこからどう見ても綺麗という言葉以外、表しようがなかった。


「綺麗？」
「伊之助の顔！」
「俺の顔がなんだよ」


意味が分からなそうに眉間のシワを深くする伊之助に、Aは男の人に綺麗は褒め言葉ではないのかもしれないと思い直して、「なんでもない」と興奮のあまり伊之助に詰め寄っていたのを一歩後ろに下がる。

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