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「好きだ!…俺はAが、いっぱい、沢山、好きだぞ!」
突然そう言って満足そうな表情をみせた伊之助は、「だから俺が、もっともっと強くなって、Aを守ってやる!」とAに向かって胸を張ってみせる。
「…じゃあ…いつも私を、目の届く範囲に置いておかないとだね」
「ん?…ああ、そうか、そうだな。たしかに…」
そう言って難しい表情で黙りこむ伊之助に、「だからさ、」とAは伊之助に一歩近付く。
「…山を降りて、一緒に暮らそうよ」
山を少し降りることも渋っていた伊之助には無理な願いだとは理解しつつも、Aは一縷の希望にかけて、じっと伊之助を見つめる。
「一緒に、って…ここにってことか?」
「うん」
一気に苦い表情を浮かべる伊之助に、やっぱり無理だったか、とAが視線を落としたとき、「…突然は無理だが、少しずつなら」と予想外の答えが返ってくる。
「えっ、」
「Aの言う通り、近くに居ねぇと守るもんも守れねぇし、ずっと一緒って約束したからな!」
そう言ってAを抱き寄せた伊之助は、「それにしばらくは離れたくねぇから、今日からしばらく、気の済むまで泊まっていくことにするぞ!」とAの肩に顔を擦りつける。
「え、本当?」
「嘘は言わねぇ!」
伊之助の返答に嬉しそうな声をあげたAは、「私も離れたくないから、嬉しい!」と力いっぱい伊之助を抱きしめ返す。
「…あ、」
至近距離で聞こえた伊之助のお腹の音にAが顔を上げると、伊之助は「腹が減った」と突然、Aの頬にかぷりと噛みつく。
「ちょっ、」
かぷかぷと何度か噛んで唇を離した伊之助は、「絶対、食ったら美味いよな」ともう片方の頬にも噛みつく。
「い、痛いっ、食べ物じゃないよっ!」
慌てて伊之助を引き剥がしたAは、色んな意味で熱い頬を隠すように伊之助に背を向けて、せっせと食事の支度を再開する。
「!天ぷらか?天ぷらだよなっ?」
作る工程を見て嬉しそうな声でそう言う伊之助に、Aは「うん」と小さくうなづきながら、遅れを取り戻すように手早く作り進めていった。
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チーズ(プロフ) - 唄子さん» コメントありがとうございます!そしてお返事遅くなり申し訳ありませんm(_ _)m嬉しいお言葉をありがとうございます!! (2023年4月10日 3時) (レス) id: 3890fde5bc (このIDを非表示/違反報告)
唄子 - 胸がキュンキュンです (2022年8月10日 21時) (レス) @page37 id: 585502c22b (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ナギサさん» コメントありがとうございます!伊之助の良さが表現できていたようで嬉しいです!ご期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2020年12月9日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
ナギサ(プロフ) - 伊之助のこの男らしさと可愛さが混ざった表現を…ごちそうさまです。続き楽しみに待ってます (2020年12月9日 6時) (レス) id: 4d18708d8c (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - しがれっとさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます〜!!お兄様いいですよね!歳の離れた妹を溺愛しつつ、厳しいところは厳しい、しっかりしたお兄様でございます(^ω^) (2020年12月7日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2020年11月24日 18時