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何がそんなに不安なのか、と投げ出すこともできるのに、どこまでもAと真っ直ぐに向き合ってくれる伊之助の真摯な姿勢に、Aがようやく顔を上げたとき、視界の端にこれでもかというほど爽やかな笑みを浮かべている兄が映って、Aは慌ててそちらに目を向ける。


「…ふふ。想像以上に、伊之助さんは素敵な方みたいだね」
「お、お兄様…」
「伊之助さんはとてもAを大事に思ってくれているみたいだし、私から言うことはもう何もないよ」


そう言ってさっさとその場を後にする兄に、Aは伊之助に目を向けたあと、何か言いかけて口をもごもごと動かす。


「…A?」


Aの声に耳を傾けるように顔を近付けてきた伊之助に、Aは頬を赤くして、「…意地悪言ってごめんね」と視線を落とす。


「…意地悪?」
「伊之助が何度も、好きだって言ってくれてるのに…、私、伊之助が好きすぎて、色々不安で…」
「好きすぎて…?すぎてって何だ?」


伊之助の問いかけに更に頬を赤くしたAは、「好きが、あふれそうと言うか…既にあふれてるんだけども…」と恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。


「!なんかこう、ぐわーってなるやつか?それなら俺も、Aが好きすぎて困ってるぞ!」


もはや伊之助の言葉のどこからが本当で、どこからが勘違いなのか分からないAは、伊之助の言葉をそのまま受け取るしかなくて、真っ赤であろう自分とは対照的にいつも通りの顔色で自分を見つめる伊之助を見つめ返す。


「…今、心臓ドクドクってしてる?」
「ああ!最近はAと居ると、ずっとドクドクだ!」


その返答に一瞬驚いたような表情をみせたあと、やっと納得がいったらしいAは、途端に嬉しそうな笑みを浮かべて「そっか」とだけ呟く。


「…、」


無言のまま、Aが伊之助に握られたままだった手をぎゅっと握り返すと、Aの気持ちの変化に気付いたのかぴくりと反応をみせた伊之助が、まるで緊張でもしているかのように、その美しい瞳を縁どるまつ毛を微かに震わせる。

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チーズ(プロフ) - 唄子さん» コメントありがとうございます!そしてお返事遅くなり申し訳ありませんm(_ _)m嬉しいお言葉をありがとうございます!! (2023年4月10日 3時) (レス) id: 3890fde5bc (このIDを非表示/違反報告)
唄子 - 胸がキュンキュンです (2022年8月10日 21時) (レス) @page37 id: 585502c22b (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ナギサさん» コメントありがとうございます!伊之助の良さが表現できていたようで嬉しいです!ご期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2020年12月9日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
ナギサ(プロフ) - 伊之助のこの男らしさと可愛さが混ざった表現を…ごちそうさまです。続き楽しみに待ってます (2020年12月9日 6時) (レス) id: 4d18708d8c (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - しがれっとさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます〜!!お兄様いいですよね!歳の離れた妹を溺愛しつつ、厳しいところは厳しい、しっかりしたお兄様でございます(^ω^) (2020年12月7日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2020年11月24日 18時

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