美少年 【嘴平伊之助】

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「…好き」
「は？」


突然のAの言葉に、意味が分からなそうに顔を上げた伊之助に、「伊之助が、好きなの」とAはもう一度呟く。


「…嫌い、じゃねぇのか…？」


伊之助の言葉を否定するように首を横に振ったAは、「好きだから、伊之助が私と同じ気持ちじゃないのが、辛かったの」と瞳に涙をにじませる。


「…Aっ？」


伊之助に負けず劣らず泣き始めるAに、もちろんその意味など分からない伊之助は、ただひたすらオロオロと戸惑って、「俺はAが好きだぞっ！」と何度も繰り返す。


「…うん…ごめんね」
「昨日もな、Aのこと考えたらソワソワーってして眠れなくてな、…ほら、ちゃんと好きだろ！？」


一生懸命自分がいかにAを好きか力説してくれる伊之助に、Aはだんだんと嬉しいのか恥ずかしいのか分からなくなってきて、涙が引っ込んだかわりに顔が熱くてたまらなくなる。


「…だから、また明日も会いに来てくれるよな？」


とにかくそれが不安で仕方ないらしい伊之助は、Aの反応などお構いなしにそう言ってそっとAの頬の涙をぬぐう。


「…むしろ今日、伊之助が泊まりに来て」
「！いいぞ！今すぐにでもいいぞっ！」


嬉しそうに即答した伊之助にAも嬉しそうに笑って、「…じゃあ、行こうか」と伊之助の手をとった。

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