美少年 【嘴平伊之助】

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「…伊之助は、私が会いに来なくなったら寂しい…？」


またその次の日、伊之助の気持ちを少しでも確かめたくて、別に、とでも言われた暁にはショックで立ち直れなくなりそうな問いかけを、Aは恐る恐る伊之助にする。


「…もう来ないつもりなのか？」


驚いたようにAに目を向ける伊之助に、Aは決定的な言葉があるまでは、と無言で伊之助を見つめる。


「な、何でだ？優しいが足りなかったか？…はっ、昨日、強く噛んだからかっ？」


焦った様子でそう言って突然にAの着物の合わせを開いた伊之助は、Aの首筋が傷ひとつない綺麗なものであるのを確認して、ほっと息を吐く。


「っ！」


訳もわからず伊之助の顔を見ていたAが、他人に見せたことがないところまで肌が露わになっていることに気付いて慌てて合わせを閉じると、明らかに落ち込んだ様子の伊之助と目が合う。


「…俺の、何が嫌いだ？…俺は、Aが好きだぞ。…全部、好きだ」


そう言ってAの手に触れようとして、迷うように離れていった伊之助の手を目で追いかけながら、Aは伊之助がこんなにも自分を求めてくれているのに、自分の好きとは違うかもしれないから、という理由だけで彼を傷つけてしまっていることを、申し訳なく思う。


「…んぐ、な、何だこれ…？」


止まらねぇぞ！と騒ぐ伊之助の瞳からは、きらきらと輝く大粒の涙がこぼれていて、何度見ても綺麗だと思わせられる伊之助の顔に、初めて見る涙によってAはいつもとはまた違う美しさを感じてしまう。


「…伊之助、」
「心臓がいてぇ。目が熱いっ、何なんだこれは…！」


その涙の意味も分からずに、ただただ涙を流す伊之助は表情を歪め苦しそうに胸をおさえて、「いてぇ、」と繰り返す。

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