美少年 【嘴平伊之助】

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「…そういえばじいちゃんが、またAを連れて来いってうるせぇんだ」
「え、全然行くよ？」
「…、でもお前、じいちゃんのとこ行くと、全然俺の相手しなくなるだろ」


どこか拗ねたような声でそう言って顎をAの頭に乗せた伊之助は、そのままぐりぐりとAの頭に顎を押し付ける。


「あ、そっか。伊之助はおじいちゃん大好きだもんね。私とばっかりおじいちゃんが話してたら、嫌だよね」


ごめんね、とAが顔を上に向けると、どうやらまだ何か不満があるらしく、口をへの字に曲げた伊之助と目が合う。


「…何が違うか分からねぇが、絶対、何か違う」
「ええ？」
「…。随分言葉を覚えたはずなのに、何で全然、自分の気持ちが説明できねぇんだ？」


むうっと唇を尖らせる伊之助に、人間らしい表情をするようになったなぁ、と関係のないことを思ったAは、初めて見る伊之助の唇の形がどうしても柔らかそうに見えて、ほとんど無意識のうちに手を伸ばす。


「ん？」


本人すら分かっていない行動の意味を伊之助が分かるはずもなく、不思議そうな表情で伊之助が同じようにAの唇に触れると、我に返ったAは恥ずかしそうに顔を上から正面に戻す。


「ここは、唇…だったか？柔けぇんだな！」


Aはそう言ってふにふにと唇を弄んでくる伊之助を制したい気持ちもあったが、自分が先にやってしまった手前何も言えず、赤くなる頬を見られないようにと、ただ前を見ていることしかできなかった。

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