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「伊之助」
「ん、」


Aの声で目覚めた伊之助は、何度か瞬きを繰り返したあとゆっくりと起き上がる。


「おはよう。朝はなに食べたい?好きなもの作ってあげるよ」
「…んー…、お前が、好きなものがいい」
「え?」
「お前の好物。…この前のうどんとやらも美味かったし、他にも美味いもん知ってるんだろ?」


そう言って気怠げな表情をAに向けた伊之助は、背伸びをひとつして立ち上がり、昨日Aに一度教えてもらっただけの着物の着付けを、いとも簡単にやってのける。


「…、やっぱり伊之助は、すごいね…」
「ふふん、なんだ、俺様を照れさせようったってそうはいかねぇぞ」
「ふふ、そんなつもりじゃないよ」


面白そうに笑って返事をしたAをじっと見つめた伊之助は、「なんかお前、いつもと違くねぇか?」としゃがみ、Aに目線を合わせて首をかしげる。


「え?…あ、髪を結ってないからかな?」
「髪〜?」


不思議そうな表情でAの髪をまとめ上げた伊之助の手つきが予想以上に優しくて、Aはドキドキと煩く音を立てる胸に手を当てて慌てて伊之助から視線をそらす。


「…ふはっ、何がそんなに恥ずかしいなんだ?」
「っ、伊之助が…!」


自分の顔を見て可笑しそうに笑う伊之助に反論しようとAが伊之助に目を向けると、自分をのぞき込むようにして見ていた伊之助とのあまりの近さに、Aは驚いて後ろにのけぞろうとする。


「?危ねぇぞ」


Aの髪に触れたままだった伊之助にAの行動は難なく阻まれて、Aはそのまま引き寄せられたかと思うと、伊之助の筋肉で固い胸板に額がぶつかる。


「ああ、そうだ。…それで結局、お前の好物は何なんだ?」


あまりに素っ頓狂すぎる伊之助の問いかけに、Aは色んなものでいっぱいいっぱいだった気持ちが一気に冷静になるのを感じて、「この世は美味しいものばかりだよっ!」と答えになっているようでなっていない言葉を、伊之助に額を押し付けるようにしながら小さな声で返した。

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チーズ(プロフ) - 唄子さん» コメントありがとうございます!そしてお返事遅くなり申し訳ありませんm(_ _)m嬉しいお言葉をありがとうございます!! (2023年4月10日 3時) (レス) id: 3890fde5bc (このIDを非表示/違反報告)
唄子 - 胸がキュンキュンです (2022年8月10日 21時) (レス) @page37 id: 585502c22b (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ナギサさん» コメントありがとうございます!伊之助の良さが表現できていたようで嬉しいです!ご期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2020年12月9日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
ナギサ(プロフ) - 伊之助のこの男らしさと可愛さが混ざった表現を…ごちそうさまです。続き楽しみに待ってます (2020年12月9日 6時) (レス) id: 4d18708d8c (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - しがれっとさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます〜!!お兄様いいですよね!歳の離れた妹を溺愛しつつ、厳しいところは厳しい、しっかりしたお兄様でございます(^ω^) (2020年12月7日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チーズ | 作成日時:2020年11月24日 18時

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