19 ページ19
・
1時間もすれば血は止まってしまい、やることがなくなってしまったAは、間近にある無一郎の寝顔を見つめながら頬をつついてみたり滑らかな肌を撫でてみたりと、普段なら起きてしまうであろうことを繰り返す。
「そろそろ、起きる時間じゃないのかな…」
身体の傷もすっかり塞がり、足も完全に元通りになっていることから相当な時間が経っていると思われるが、無一郎といえば熟睡していて一向に起きる気配を見せなかった。
「無一郎、起きなくていいの？」
「ん…、」
気を使ってAが声をかけると、返ってくるのは苦しいほどの抱擁だけで、Aはそれが嫌ではないこともあり、無理に起こす気になれないでいた。
「あったかい」
無一郎の首筋に顔を寄せると感じる無一郎の甘い匂いに、舐めたら甘い気がしてAは考えなしに吸い付いてみる。
「…あれ、味しない」
「…なにしてるの」
「！」
驚いたようにAが顔を上げると、不機嫌そうな表情の無一郎と目が合って、Aはとっさに「無一郎が美味しそうだったから！」と訳が分からないながらもそのままの本心を口にしてしまう。
「…なにいってるの」
まだ少し寝ぼけているのか、そう言ってゆっくりと瞬きを繰り返した無一郎は、「美味しかった？」と表情をやわらげる。
「味しなかった！」
「…ふ。だろうね」
可笑しそうに笑ってゆっくりと起き上がった無一郎は、眠そうに目蓋をこすってAに「隊服とって」と声をかける。
「…はい！」
「ん、ありがと…」
ゆったりとした動きで着替え始める無一郎はとても眠そうで、Aは「寝不足なの？」と心配そうに無一郎を見つめる。
「んー。…なんか、任務地が辺鄙なとこだったから迷っちゃって…鬼に襲われそうでやだから、寝てないんだよね」
「ええっ、寝てないの？」
「うん。それで、Aが待ってると思ってそのまま寝ないで帰ってきたのに…Aが悪い子だから、余計に寝る時間減っちゃった」
そのまま、「今日はちゃんといい子にしててね」と部屋を出て行ってしまう無一郎だが、Aは無一郎が少しでも自分の為を思って行動してくれていた事実に、この上ない嬉しさを感じる。
「ふふっ」
次は無一郎が遅くなってもちゃんと屋敷で待っていよう、と心に決めたAは、まだ温かい無一郎の布団に入り直して小さく笑い声をもらした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 456人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チーズ(プロフ) - alice roseさん» コメントありがとうございます！そして嬉しいお言葉までありがとうございます！！これからも沢山ニヤニヤしていただけるように頑張ります！(笑)よろしくお願いしますm(__)m (2020年11月5日 18時) (
レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
alice rose - 控えめに言って最高です！いつもニヤニヤしながら読んでいます、これからも無理せず頑張って下さい！応援しています(≧∀≦) (2020年11月3日 21時) (レス) id: a666e6cc6f (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - まいまいさん» コメントありがとうございます！最高すぎるだなんて、嬉しいです！ちょうど更新しましたー！これからもよろしくお願いしますm(__)m (2020年11月3日 19時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい - 最高すぎます！！更新まってます！ (2020年11月3日 19時) (レス) id: 194af2ccd7 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ？？？？なしさん» コメントありがとうございます！神！？なんと有難いお言葉、、！！頑張って書きますので、これからもよろしくお願いしますm(__)m (2020年11月2日 20時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チーズ
| 作成日時：2020年10月20日 19時
