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「お腹減った…」
無一郎が居なくなって何日経ったのか、いよいよ我慢できないほどの渇きを感じ始めたAは、無一郎に連れられてきてから初めて、屋敷の外へと出る。
「久しぶりの外だぁ。…みんな美味しそうだなー」
すれ違う人たちから感じる甘い香りにそんなことを呟いて、Aは自分が本当に人間ではなくなってしまったのだと今更ながら実感してしまう。
「でもやっぱり、無一郎が一番いい匂い」
そこまで考えて、無一郎の匂いがする屋敷から出てきてしまったことを、Aは早くも後悔し始める。
「うー、やっぱり戻ろうかな…」
そう言って踵を返そうとして、微かに無一郎の匂いを感じた気がしたAは、恐る恐る暗がりへと足を踏み入れる。
「無一郎…?」
匂いの元に近付いてみると、やはり感じるのは今一番待ち焦がれている無一郎の匂いで、Aは一生懸命無一郎の匂いを辿って歩みを進める。
「!」
無一郎の匂いが濃くなったと思った瞬間、お腹に熱いものと衝撃を感じてAはゆっくりと自分のお腹に視線を向ける。
「…逃げ出してきたの?」
囁くように言われたその言葉と共に後ろから誰かに抱きしめられて、Aはお腹から突き出る細長いものが何か分からず、「無一郎、」と自分を抱きしめている人物の名前を呟く。
「悪い子だなぁ…せっかく、優しくしてあげてたのに」
ずるりとお腹から何かを引き抜かれて、Aはそのまま自分で自分を支えられずに地面に倒れ込む。
「…無一郎っ、」
「悪い子にはお仕置きしなきゃね?」
そう言って笑う、月の光に照らされた無一郎の微笑みは、その場に似つかわしくないほどただただ美しかった。
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チーズ(プロフ) - alice roseさん» コメントありがとうございます!そして嬉しいお言葉までありがとうございます!!これからも沢山ニヤニヤしていただけるように頑張ります!(笑)よろしくお願いしますm(__)m (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
alice rose - 控えめに言って最高です!いつもニヤニヤしながら読んでいます、これからも無理せず頑張って下さい!応援しています(≧∀≦) (2020年11月3日 21時) (レス) id: a666e6cc6f (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - まいまいさん» コメントありがとうございます!最高すぎるだなんて、嬉しいです!ちょうど更新しましたー!これからもよろしくお願いしますm(__)m (2020年11月3日 19時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい - 最高すぎます!!更新まってます! (2020年11月3日 19時) (レス) id: 194af2ccd7 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ????なしさん» コメントありがとうございます!神!?なんと有難いお言葉、、!!頑張って書きますので、これからもよろしくお願いしますm(__)m (2020年11月2日 20時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2020年10月20日 19時