共依存 【時透無一郎】

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「…、起きてたんだ」


次の日、無一郎が目を覚ますと自分を見ていたAと目が合って、まだ眠い目を細めて笑った無一郎は、するりとAの真っ白な頬を撫でる。


「…。どうして…」


それだけ言って他に言葉が見つからないのか、Aは気まずそうな、戸惑っているような表情であちこちに視線を動かす。


「…どうしてって？」


そう言って人好きのしそうな笑みを浮かべる無一郎を窺うように見つめたAは、「昨日、」と言って言葉を探すようにモゴモゴと口を動かす。


「…ああ、昨日。…随分と気持ち良さそうだったね」
「！あれは…！あれは、駄目だと思う！」
「？…痛くしてほしかった？」
「いやそれも違うけどっ！」


顔を真っ赤にして無一郎の言葉を否定したAは、「私は優しい無一郎が好きなの！」と突然脈略のないことを言う。


「？…だから、優しくしてあげたじゃん」
「っ、突然優しくなるのは、駄目！」
「意味が分からないよ」
「〜っ、だってだって、昨日からずっと、心臓が痛い！今も痛い！…きっと、無一郎が突然優しくしたせいだよ！」


意味不明なAの言葉に、「じゃあ痛くしてあげようか？」と無一郎は布団から出ているAの肩に噛みつく。


「いたっ！」
「…相変わらず不味い血だね」


そう言いつつも唇についたものまできちんと舐めとる無一郎に、Aは言い様のない気持ちの昂りを感じる。


「〜絶対おかしい！私、おかしくなっちゃったんだ！」


相変わらず顔を赤らめたままそう叫ぶAに、怪訝そうに眉を寄せた無一郎は、「…僕にはいつも通りに見えるけど？」とAを黙らせるように指先でその唇をつまむ。


「んんっ！」
「ていうか、朝からうるさい。Aはすぐに元気になるから良いけど、僕は昨日、無駄にAに優しくしたせいで疲れてるの」


無駄に、という無一郎の言葉に、じゃあ優しくしなければ良かったのに！と言おうとして、Aは慌てて口をつぐむ。


優しくされすぎるのも心臓が痛くて身体に悪そうだけど、痛いことをされるのはもっと嫌だ。

色んなことを考えた結果そう結論付けたAは、「ね、これからも優しいのがいい！」と無一郎に笑顔を向ける。


「…、はは。そんなに気持ちいいのが好きなんだ？」


やらしいんだね、と細められた無一郎の瞳に滲むものの意味がAには分からなくて、Aは訳が分からないまま、だんだんと近付いてくる浅葱をただじっと見つめていた。

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