8 ページ18
・
散々自分の血を吸われ、無理やりたくさんの月彦の血も飲まされたAは翌日、激しい身体の痛みと嘔吐に見舞われていた。
「んぐ、ゴホッ、」
「A」
何百年ぶりに見るAの体調不良に、しおらしくAを見つめて心配そうな表情を見せる月彦は、すぐに温くなってしまうAの額に乗せている布を、何度も水に浸しては絞り、Aの額に乗せ直す。
「私の血は、お前には毒なのか」
「毒などと、まさか…んぐっ、」
Aが吐き戻したものを月彦は桶で受け止め、すぐにAの口を手拭いで拭いてやる。
「私は死にかけのお前に、自分の血を飲ませた。その時も苦しんでいたが、目を覚ましたあとは私と同じになっていたから、てっきり薬になるのだとばかり思っていたが…」
難しい表情でそう言った月彦の言葉の意味がよく分からないAは、「私がこれほどまで永く月彦さまと共に生きられるのは、月彦さまのおかげなのですね」と微笑むと、そのまま体力の限界を迎えたのか、静かに深い眠りへと落ちてしまう。
よほど苦しいのか、息も浅く唸り声をあげながら眠るAの身体を優しく拭いてやり着替えさせたあと、月彦もその隣で横になり、一緒になって眠りにつく。
あの時一緒になって眠らなければ。
Aから目を離していなければ。
月彦が何度も考えた、唯一のもしもと後悔だった。
1587人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をありがとうございますー!!こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - とても美しすぎて儚すぎる結末に声が出ないくらい涙しました。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月26日 2時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - 草薙@sadist_nagiさん» コメントありがとうございます!そして最後まで読んでいただきありがとうございました!かく言う私も、目から大量の海水をこぼしながらこの作品を書きました、、自分で言うのもあれですが、本当に切ない結末ですよね(;ω;) (2020年12月25日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
草薙@sadist_nagi - …あれ…目から海水が(( (2020年12月25日 14時) (レス) id: b78cc7195a (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ゆうこさん» コメントありがとうございます!もちろん気付きました〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m (2020年11月11日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月29日 19時