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いつからだろう。
彼に抱き締められると安心するようになったのは。
2人で寝ると暖かいよね、と屈託無く笑う彼が、愛しいと思うようになったのは。
真夜中、ふと目を覚ます。朦朧とする意識の中、自分がユーキの腕の中にいると理解するともう一度目を閉じた。額をその胸板に押し付けて、その背中にもう一度手を回して。
「……なんだよー」
「………別に……」
「……もう、離れたりしないんだね」
「…………」
ふふ、と笑った彼は、私をぎゅっと抱き締め頭を撫でた。その暖かさに安心して、そのままもう一度眠りに就いてしまったんだ。
「………A、大好き」
明け方、眠る私を見てそう言った彼が泣いてた事なんか知らない。
私の頬の涙の跡を拭いて、最後にそこにキスを落として。
朝起きたら、彼はいなかった。
「………ゆうき、」
シーンとしている家の中。隣からぽっかりなくなった温もり。
心当たりのある場所なんてない。それでも外を歩き回って、ひたすら探して。電車に乗れるわけでもない彼なら、まだ近くにいるんじゃないか。
ずっとずっと探し回った努力も虚しく、結局一人で真っ暗な家に帰る。玄関に座り込むと、一気に現実が襲い掛かって涙が滲む。
「………っ、なんでよ…」
きっと私は、彼は私の側からいなくならないって勝手に思い込んで安心してた。
あなたは私に、幸せになってほしいって言ったよね。
きっと私の幸せは、これからも2人で暮らしていくことで。失ってから気付くって、本当だった。
私、こんなんじゃ幸せになれないよ。
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エリンギプール(プロフ) - 続きが気になります! 大変だとは思いますが、更新待ってます! 頑張ってください (2018年12月15日 23時) (レス) id: b1e7a3c80b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:な な . | 作成日時:2018年10月10日 23時