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「この辺なの?会社」
「二駅隣…」
「ふーん……タバコ吸っていい?」
「あ…いいよ…」
ビールを頼んで料理を待ってる間、当たり障りのない会話で間を繋ぐ。
…タバコ、私と付き合ってた時は吸ってなかったよな。タバコを咥えて壁のメニューを眺める横顔をぼーっと見つめる。……やっぱり拓弥ってかっこいいんだな…
「何?」
「…や、別に」
「……Aってさあ彼氏いんの?」
「…急だね……」
この現状、付き合ってると言っていいのだろうか。別れ話はまだしてないから一応付き合ってる…?答えに渋っているとタイミング良く料理が運ばれてきて2人で箸を伸ばした。
「……拓弥は?いるの?」
「いないけど」
…この顔ならモテない訳ないけどいないんだ。拓弥って他の子にもああだったんだろうか。……ていうか拓弥って私のどこが好きだったの?何でもくれるところ?……それ私ただの財布じゃない?いや、実質財布みたいなもんだったけど。拓弥は私以外の子と付き合った時どんな風に接してたのだろう。別れて2、3年で今更こんな疑問ばかり浮かんでくる。
「何怖い顔してんの?」
「……拓弥って、彼女に浮気された事ある?」
「…ないけど。何?浮気されたの?」
頬杖をついてこっちを見て笑う。元財布が浮気されている事を心の中で嘲笑っているのだろうか。
…もう会わないだろうし、別にどう思われてもいいや。
「…Aってさーすげー優しいよね」
「え?」
「なんでも俺にくれたじゃん」
「……だって欲しいって言ったじゃん」
「でも俺Aには何もあげた事ないんだよ?」
「…………」
だって、それは。
拓弥が笑ってくれるならそれでいいかなって、そう思ってたから。それに拓弥は、そういうの……
「最初っから俺はどうせ何もくれない人って思ってたんじゃないの?」
「………」
「俺もね、もしAに求められてたら何かしらしてたよ?…そういうとこじゃないの?Aはもっと自分の気持ちとか我儘言えばいいんじゃない」
そんな事、今更言われたって。
今までの行動を全否定されたような感じがして。私と拓弥がヒモと貢ぐ女みたいな関係になっていたのも、海が浮気したのも、私が原因?海は結局、私じゃ満足しなかったって事。
残りのビールを一気に流し込むと拓弥はふう、と息を吐いた。煙草の白い煙がゆらゆらと消えていく。
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エリンギプール(プロフ) - 続きが気になります! 大変だとは思いますが、更新待ってます! 頑張ってください (2018年12月15日 23時) (レス) id: b1e7a3c80b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:な な . | 作成日時:2018年10月10日 23時