頑張ることの基準 ページ25
しゃるとサイド
_私は自分の家族が好きだ。
そう胸を張って言えるだろう。
私は母のことも父のことも、姉も兄も大好きだ。
ただ1つ、気になることがあった。
｢今度はもっといい点数取れるんじゃない？｣
私が高校生の時、母は再びそう言った。
｢A、次はもっと頑張れよー｣
父も、母と同じような言葉を発ししていた。
私は両親から、褒められたことがない。
両親の口癖は決まってこれだ。
｢頑張ることは当たり前なんだから。｣
“頑張ることは当たり前”。その言葉は、
まるで呪いのように感じていた。
でもいつからか、その言葉すらも当たり前に
なってしまっていて何も感じなくなっていた。
｢A以上に頑張ってる子もいるんだから、それを貴方も見習わないとダメよ？｣
なんて言われたことだってある。
私だって頑張っている。そのつもりでも、
両親にとってはこれっぽっちに過ぎないのだ。
私が踊り手として活動し始めた頃もそうだ。
｢ここもっとはっきり踊ればいいのにねぇ｣
ダンス経験のない母はそう言った。
正直な話、悔しかった。私は頑張ったのに。
けどやはり足りないのだ。頑張りは。
私は、もっともっと頑張った。
けどいくら頑張ったところで両親が望む所までは
程遠いようで、何も言えなくなってしまった。
そんな両親に育てられたからか、兄も姉も
私を褒めるなんてことはなかったに等しいだろう。
でも、私の活動は応援してくれた。
“頑張れ”という一言で終わってしまったけど。
私にとって、頑張ることは当たり前だった。
そのはずなのに_____
｢頑張れるって、偉いんだよ。｣
彼はそう言った。
偉いと褒められるのも初めてで、
違和感しかなかったその言葉。
私はその言葉を求めていたのかもしれない。
｢熱中できるのも凄いと思うし、頑張ってるからできることだと思う。｣
やめてよ、そんなに優しくしないで。
そう心が叫んでる。彼の優しさに触れてしまえば
もう戻ることは出来ないような気がしたから。
｢その頑張りが伝わってるから、俺みたいなファンを惹き付けるんだよ。｣
私の頑張りは認められることはなかった。
けれど、その頑張りはみんなに届いているのか？
そう、優しく言ってくれた貴方は綺麗だった。
嗚呼、もう後戻りは出来ないな。
頑張るって、偉いことなんだ。
そう思えば、頑張ることも悪くないのかもね。
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作者名：まい | 作成日時：2020年12月12日 19時
