0031:モス ページ32
【サカナクション】
私が決心を決めても、君は私を学長に渡そうとする手を引っ込めない。
｢俺は構わな｢〈絶対に嫌だからね〉｣
せっかく、せっかく、せっかく、何時の間にか失った私自身の私らしさと、それに見合った本当の後悔を取り戻したのに。
｢…傑が嫌だって｣
｢〈(よしっ！)〉｣
勝った。
勝利のゴングが聞こえた気がして、ガッツポーズを学長に見せつける様に掲げた時。
グラグラと視界が歪み、授業中の居眠りに似た意識を強く引っ張られる感覚がした。
｢そいつに決定権は無い…渡すん……｣
私は2人の話し声を遠くに聞きながら短い夢を見ている。
これは今際の際。
私の生と死の境目の記憶。
『君で詰むとはな。家族達は無事かい？』
本当に無理やりAを拐えば良かったと、後悔。
これが終わればまた連れ出して、しっかり謝って、Aが許してくれるのなら私の家族になれば良いと、きっと彼女たちも、みんな喜んでくれるだろうと、
『ただこの世界では、私は心の底から笑えなかった』
喉元までせり上がってくる言葉。
｢〈(飲み込め)〉｣
『(さようなら『A』)』
全て飲み込んで受け入れても尚、冥土の土産が欲しかった。
｢……企みが有りそうなのは確かだ。お前はその時になれば高専を捨てろ｣
ふっと意識が戻ると学長の声がして、君の長い睫毛が触れる程近くにあった。
私の記憶はない。
それでも甘くて優しい味はする。
｢〈(もしかして？)〉｣
確認したくて、しがみついたまま胸元までズルズルと下がってみた。
仰ぎ見えるのは君の真剣な顔つきと、真っ白な制服。
感じるのは君の穏やかな心音と、支える様にして私の背中に回された手の温度。
｢〈(あの人たちも私をこうやって抱いてくれていた)〉｣
それらを嬉しく感じるのと同時に再び両親を思い出して、凄く、酷く苦しい後悔の波が押し寄せる。
最初に私の両親へ、そして遺してしまった家族へ。
｢お前が成すべき事は、お前の死を意味する。私はそれを知っている｣
悶々と考えていれば覇気の無い学長の声がする。
内容もそうだけれど、私には理解出来ないし、
｢〈私は知らないし、許さないよ〉｣
｢…っふ、はは！傑も一緒にいきたいの？｣
聞こえた話に堪らず口を突いて出した言葉で空気が凍った気はした。
でも、一瞬の間を置いて笑う君が空気を変えたのが分かる。
｢〈"共に"と。私は決めたからね〉｣
｢…なら傑は連れていく｣
君独特の含み笑いの後に、勝手にしろと学長は言った。
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ゆきみ大福(プロフ) - ボブさん» コメントも評価もありがとうございます。文章力が足りなくてすみません(´；ω；｀)分からない所を教えて下されば！解説作ります！ (2021年7月30日 22時) (
レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - お話少し難しいけど、読んでいて楽しいです！毎日更新楽しみにしながら過ごしています！星の一番右端押しました！！ (2021年7月28日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ大福(プロフ) - 絶対に出て来るなぁ。笑える。低評価あざーす (2021年4月28日 12時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆきみ大福 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/
作成日時：2021年4月27日 23時
