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0020:組曲「義経」―夢魔炎上 ページ21

【陰陽座】

「お待たせ"むう"」
「〈…待ったよ。とてもね〉」

気付けば私は木の枝に引っかかっていて、君は私を回収すると丁度よく近くにあった太い幹に腰掛ける。

幾ら事前に聞かされて知って居ても、放り投げられた後にここまで待たされるとは思わなかった。
でも空の色が変わっていない所を見れば、実際にはさほど時間は経っていない事は分かる。

「どんな感じ?」
「〈…2、3時間はここに居た感じかな〉」

生きていた時とは明らかに体感する時間が違う。

「〈加えて言うなら、君と医務室で別れた後から数年は待っていたよ〉」

嫌味じゃなく本当にそう。
ひとたび君から離れれば、私の意識は沈んで君の生得領域へ、真っ暗闇な世界ではただただ時間が長く感じる。

「これが五条に触れる理由」
「〈…どういう事?〉」
「俺の術式は《!!'Cause I found the way to!!》

前と同じく、今度はスマホの着信音で大事な所を遮られてしまう。
スピーカーにされた電話口からは夜蛾学長の声が響く。

「《…A、今どこに居る》」
「…学内」

普段、君と2人きりの時もそうだけれど私は口を開かない。
"むう"と呼ばれている理由は『夏油傑』と言う私の名前を隠す為。

存在がバレる事を危惧した君の提案。
それは私の魂がこの可愛くない呪骸に定着した日から始まり、今日やっと久しぶりに君と会話をする。

「《…何をするつもりだ》」
「…知ってて、壊しに来なかった」

提示されたのは、
1つ。口を開かない事。
1つ。君自身の準備が整うまで待つ事。
1つ。悟、硝子、学長を含めて誰も居ない事。

この条件が全て出揃った時点で私に秘密を明かすと、君は私に約束した。

「…目的は何?」
「〈(今がその時では有る様だけれど)〉」

会話の内容は聞こえていても、君が一体何を考えているのかも、なぜ学長が口を噤んだのかも。
私には一向に理解は出来ない。

間を置いて懇々と問い詰める君と長い沈黙を紡ぐ私と学長。

「何かを守る為に教えられないの?」
「《……何を知りたい》」
「…言うまで、言わない」

やっと君の問いかけに学長が答えたかと思えば、質問で返して来た。
置いてけぼりの私にはそれが少し腹立たしくはある。

「《………A》」
「…俺は知りたい」

でも何故か進展したと本能的に感じる。
会話の途中で覗き見る君の眼光は鋭くて見透かす様で、思考が掻き乱されて居心地が悪い。

今はその視線の先に居るのは私では無いと、自分に言い聞かせるしか無かった。

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ゆきみ大福(プロフ) - ボブさん» コメントも評価もありがとうございます。文章力が足りなくてすみません(´;ω;`)分からない所を教えて下されば!解説作ります! (2021年7月30日 22時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - お話少し難しいけど、読んでいて楽しいです!毎日更新楽しみにしながら過ごしています!星の一番右端押しました!! (2021年7月28日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ大福(プロフ) - 絶対に出て来るなぁ。笑える。低評価あざーす (2021年4月28日 12時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/  
作成日時:2021年4月27日 23時

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