0019:微睡忍法帖 ページ20
【陰陽座】
虎杖と釘崎の歓迎会を兼ねて食事に行くと言う五条達から離れ、Aは1人術式を用いて高専へ戻った。
先程まで都会のビル群が建ち並んでいた風景は、立ち所にして消毒液の匂いが鼻を掠める医務室へと変わる。
移動して来たAは、力なくソファにだらりと座る呪骸の真横に立ち、キョロキョロと辺りを見渡す。
しんと静まり返った室内にはA以外の人影は無く、あるのは彼から発される衣擦れと、手枷の鎖がガチャりと当たる音。
「硝子…居ないの?」
ポツリと零した言葉には誰も返事をしないと思えたが、呪骸が「よっこいせ」とでも言いたげに、大袈裟に座り直してから首を傾げた。
それを見たAは家入の仕事机に向かい、適当な紙に今の時間と外出する旨を書き置きして、呪骸を抱き上げて医務室を後にする。
最初に向かうのは3年の教室。次に2年。最後に術師の待機室。
どの教室にも人は居らず、何処に行ってもずっと沈黙が続く。
「忙しいね。…みんな」
Aの独り言に呪骸は頷いて返事をする。
最終的に彼が行き着いたのは屋外。
校内を歩いていた時とはうって変わってAの足取りは軽く、子供が新しい靴を履いた時の様に少し跳ねながら、その赤い目には空を映し足取りの赴くままに歩く。
「…行ってらっしゃい」
正面に広がるのは鬱蒼と生い茂る、高専の敷地内にある森。
抱いた呪骸がこっくりと大きく頷いたのを腕の中で感じた瞬間、彼は助走をつけて両手でそれを森の中へ、高く遠く放り投げる。
「〈うっ!〉」
控えめな甲高い声が呪骸から漏れ出たかと思えば、元々小さかったその姿は一瞬の内に見えなくなった。
その場に残ったAはスマホを取り出して画面を軽る叩き、メールを認めている様子。
「(お疲れ様。明日、車を運転出来る補助監督官を借りたい。お願い出来る?)」
簡潔な文章を送る相手は伊地知潔高。
同行しますとの彼の返信は早かった。
「(お疲れ様です。明日、補助監督官(伊地知)付きで過去に準2級以上の呪霊が発生した場所の下見に行きたいです。)」
次のメールの宛先は夜蛾学長。
それからCCにはまたも伊地知。
暫くするとAには夜蛾からの着信が入る。
「《…何のつもりだ?》」
「呪力を回収出来るのが分かった。溜まり易い所に行きたい」
「《…分かった。一先ず許可しよう。報告書は必須だからな》」
呪霊が生じる可能性を潰すのがAの思惑だろうか、許可が下りツーと音声が流れるのと共に彼は忽然と姿を消した。
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ゆきみ大福(プロフ) - ボブさん» コメントも評価もありがとうございます。文章力が足りなくてすみません(´;ω;`)分からない所を教えて下されば!解説作ります! (2021年7月30日 22時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - お話少し難しいけど、読んでいて楽しいです!毎日更新楽しみにしながら過ごしています!星の一番右端押しました!! (2021年7月28日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ大福(プロフ) - 絶対に出て来るなぁ。笑える。低評価あざーす (2021年4月28日 12時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/
作成日時:2021年4月27日 23時