久しぶりの解体屋 2 ページ7
Aは必ず逝く前に夢を見させる。
いや、俺がやられた訳では無いから本当にそうなのかは知らない。
ただ俺たち幹部が何度かみたこの光景で満場一致した意見だった。
「怖いね、痛いね、辛いね」その言葉の後に必ず「大丈夫、オレがいるよ」と続ける。
理由はいまだだに知らない。
ただ、それをすることによって静かに息を引き取るのだ。
例え全身麻酔が無くても暴れる事を忘れたかのように死んでいく。
きっと死ぬ瞬間は女神か天使に見えるんじゃないか?、そう言った鶴蝶に誰も笑わなかった。
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「……んーダメだこの女」
ジッとクラシックを鳴らしていたカセットが止まる。
それと同時に新調仕立てのメスを先程の女に針山のように突き刺した。
「どうした?珍しく失敗か〜?」
「あぁ……蘭ちゃん、きてたの?」
先程とは打って変わった無表情。
つまらない、と言いたげなその顔と気だるそうな声に俺は首を傾げた。
少し汚れたゴム手袋と手術着を適当に脱ぎ捨て離れた位置にあるソファに倒れ込んだ。
まるで電池の切れたおもちゃ見たいだな。
全く動かなくなったA。
何が気に食わなかったのか寝転がる女の中身を見て察した。
「既に取らてたのか」
「…チッ 面白くねぇ〜」
本来Aが取り出したかった“中身”は片方が既に無く、その他もそれなりに傷みがきていたようでやる気をなくしたんだと思った。
ソファに小さく丸々Aは見るからに不機嫌だ。
「久しぶりの解体だったのに」
「新しい奴をまた持ってきてやるよ」
するりとAの伸びた白い髪に口を落とす。
少し埃臭いがその奥から匂うA自身の匂いに酔いそうだった。
「蘭ちゃんが連れてきてくる奴は綺麗なのが多いのに、春ちゃんが持ってくるの大体汚い」
「ははっ!!そりゃそうだろ。三途が受け持ってるのガチでどうしようもねぇ連中なんだからよ」
本来は見逃しても良い奴らをAの為に持ってきてる、てばれたらボスに甘やかすなって言われるかな?
まぁボスも大概Aを甘やかしてるんだけど。
「はぁ〜…今日蘭ちゃんの所に泊まろうかな」
「お!いいね〜。一緒に寝よっか〜」
Aの白く細い手に口付けをする。
そのまま上に顔をあげ流れるように唇を奪う。
「あ、まだ言ってなかったな…解体おつかれ」
「嫌味にしか聞こえないけど?」
ふわりと笑ったAの腕を引っ張りそのまま自分の家に持ち帰った。
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作者名:消毒液 | 作成日時:2021年11月29日 1時