その感情の名前は 2 ページ11
「それにしても珍しいですね。Aが物を欲しがるなんて」
ふと思いついた言葉をそのまま言葉にした。
ただ、それだけの事だったがAの顔が一瞬引き攣ったようにみえた。
『……やっぱ似合わないかな』
「そういう訳では無いですよ。とてもAに似合って綺麗です」
Aの気分が下がる前に言葉をかぶせた。
少し曇っていた顔は勢いよくこちらへ向いた。
『へへ!ジェイドが言うなら間違いないね!』
「ええ。間違いないです。きっとアズールもフロイドも言ってくれますよ。さぁそろそろ帰りましょう」
Aの笑顔が戻りいつもと変わらない表情にほっと胸を撫で下ろす。
Aは気分屋だ。
フロイド以上に、気分屋で子供っぽい。
少し前まで元気ではしゃいでいても数分後には部屋の隅っこに座っているような子なのだ。
無神経に見えて繊細。
少しの言葉で他の人より多く傷つき、過去のトラウマが出てきてしまう。
それと真逆でちょっとした事でテンションが上がりストッパーが外れてしまうことある。
僕達幼馴染以外はとても扱いにくい。
だからこそ、僕達は満足している。
Aは僕達が居ないと進むことも止まることも出来ない。
なんて魅力的なんだ。
夕陽でキラキラと光Aの髪。
背丈は人魚にしては小さく、栄養が吸収されにくい為に平均よりも細い身体。
フロイドでは無いがこの姿を長時間見ていると今すぐ絞めてしまいたい衝動に駆られる。
『ジェイドー?』
「すみません、考え事をしてました」
横に並ばなくなった僕の事を心配して覗き込む顔。
その顔から伸びている首を思わず掴んでしまう。
案の定、僕の手に収まってしまう細い首。
このまま、このまま絞めてしまえばAは……。
どくどくと脈打つ音が手に伝わる。
このまま、Aを…。
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作者名:消毒液 | 作成日時:2020年7月12日 5時