ビタースウィート・ルーム【Kazunari.N】 (ページ8)

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ふかふかのベッドは、いつもと違う感触でなんだか心地よかった。

甘い匂いは、いつもの柔軟剤の匂いとは違って新鮮だった。

見える景色は一向に変わらず、現実の世界はあまりに不思議なものだった。

「・・・なんで？」

「え、昨日のこと憶えてない？」

私の部屋じゃないこの“空間”は、確かに間取りは同じであることをすぐに理解はできたけど、“ココ”は私の部屋じゃない。

今更ながら、やばい…と思った瞬間

「ココ、俺の家ね」

お隣さんは、薄い唇を開けた。

「・・・えっと、その」

「だから、昨日のこと憶えてないの？」

「あまり…」

「エレベーターでさ、」

「…あ」

「理解した？」

ズキン、と微かに痛む頭。

その薄い唇の端が小さく上がったとき、私は“昨日”のことをぼんやりと思い出した。

「・・・私」

「急に意識失っちゃうから、そりゃあもうビックリしたよ俺」

くくっと変な笑い声を上げた彼。

霞むエレベーターの中、そこから暗くなった視界。

そこから意識が途切れた。

それから意識がポンッと戻ると、何故か“ココ”にいた。

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