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「うっわ、なんだこれ！なにが嬉しくてこの恐ろしいほど怖いのを見てんの俺たち？」
「うるさいです、黙ってください」
「ちょっとやっぱアンタ趣味悪いな」
恋愛映画、甘い物語
私がカレと見ていた映画は気分じゃなかった。
だから、甘くない話が見たかった。
甘くなければ何でもよかった。
もう絶対来ないと思っていた、一度だけ迷い込んでしまった二宮さんの部屋に酔っぱらってもいないのに、私はいる。
いや、酔っぱらってても絶対来ない
意識さえ失ってなければ・・・。
「ムードの欠片もねぇな」
「ムードなんていらないから大丈夫ですよ」
「は？バカにしてる？」
「だから静かにしてください」
茶色のソファに自然に座ってて、二宮さんが隣にいる。
金曜日の夜は、いつもアイツと映画を見て夜更かしをした。
次の日はお互いお休みだから、目一杯朝寝坊をした。
お昼過ぎに起きて、ダラダラと甘いときを過ごして、夜になると、アイツは私の頭を優しく撫でて帰る。
「またね」と言って、「好きだよ」って言って、私の心を離さないように、その甘い顔は笑った。
「ホラー好きな女なんてモテねぇぞ」
「だから！黙って見れないんですか？」
隣に感じる二宮さんの温もりが、ぽっかりと空いた隙間に、押し込められる。
それが擽ったくて、意味もなく心が泣きそうになった。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
