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「どこ行くんですか？」
「どうせ暇でしょ？カレシいないし」
「・・・うっ」
「あ、ごめんね？まだ引きずってんの？」
「悪いですか」
「べつに(笑)」
「だから、どこ行くんですか？」
行先も伝えられないまま
「付き合ってよ」
その言葉の有無を要さず、月明かりの夜の街をただ二宮さんの背中を追って歩いた。
「いっつも廊下でさ、今日は一緒にお風呂入ろ？DVDの続き見ようね、とかバカでかい声で話してんの、それ全部俺聞こえてたこと知らない？」
今日は綺麗な満月だ、そんなことを思う余裕はどこにもなかった。
「知りませんでした」
「だろうね、俺がアンタの後ろにいたことも気付いてないときあったから」
相変わらずグイグイと腕を引っ張って、自分勝手に歩く二宮さんの背中を見ることしかできなかった。
せっかく家に帰った道を、また引き返す。
「アンタのカレシ、アンタの家にオンナ連れて入ってた」
「・・・え」
グイグイ引っ張る手が、突然止まる。
それと同時に、力が抜け落ちた。
「だから言ったじゃん、だらしない男でしょ？別れて正解だったよってさ」
突然止まったのは、どうやら信号待ち。
抜けた力が入りきらないうちに、二宮さんは青信号を合図にまた歩き出した。
「・・・知らなかった」
アイツは、私に平気でウソを言う男だった。
それは、知ってた。
分かってたのに、分かろうとしなかった
苦い思いを、甘い言葉一つで紛らわせて。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
