７１：大好きなんだよ 〜M〜 ページ31
ドアを開けると、死んだ魚の様な目のニノが呆然と立っていて。
無言のまま部屋に入りテーブルの前にペタンと座ったと思ったら、持っていたビニール袋の中からウイスキー瓶を出して…
呑むの？
どうすんの？って見てたら栓を開けて、そのままラッパ呑み。
「ちょ、ちょっと！ニノ！そんな呑み方…。」
慌てて駆け寄り瓶を取り上げ様としたけど、上手く躱され３分の１は一気に呑んだであろうニノ。
「…どうしたの？Aちゃ『言うな』」
低い声でそれだけ言うとまた呑み始めて…
瓶が空になると次はビール。
自分の分とご丁寧に俺の前にも置いてくれて。
様子を伺いながらちびちび呑む俺。
ニノはやっぱり一気に呑み干すと、ゲップをしながらバリッと缶を握り潰して次…。
そんな呑みすっとね…
「ねぇ…好きなら…やっぱAの幸せ考えてやるべきだよな…。」
酔っ払って俺から言わなくても勝手に話し出す。
やっぱりAちゃん関係ね…。
「ニノが幸せにしてやればいいんじゃない？」
「…俺じゃ無理…無理なんだよ…アイツじゃねぇと…。」
アイツ？
「諦めんの？」
「…好きなんだよ…大好きなんだよ…俺はアイツじゃねぇと……諦めらんねぇよ…。」
ニノの声が段々と涙声に変わってく…。
「じゃぁ『俺が一番欲しかった言葉…』」
泣き上戸でもないニノの声が…
缶を握る手が…
尋常じゃないくらい震えてる。
「俺じゃない男に言ってた…。」
「ちゃんと確かめた？何かの間違えじゃ…？」
「会社だって！俺が…俺が守ってやりたい。守ってやるのに…。」
会社…？
ポタポタ落ちる涙を拭わず、また一気呑み。
そっからのニノは話す事なく、ひたすら呑み続け…
案の定潰れた。
テーブルの上に突っ伏すニノにタオルを掛けてやって、テーブルの上の携帯を手にする。
「翔ちゃん？」
ーん？どうした？
「ニノとAちゃんの事だけど…会社でなんかあった？」
ーいや…普段は接触ない部署同士だし…。どうした？
「浴びる様に呑んで泣きながら潰れた。」
ーえ？ニノが？
翔ちゃんもびっくりしてて。
ニノは他人に自分の心内を悟られない様にするのに長けていて。
そのクセ、自分は鋭い観察眼で他人の心内を読み取る。
けど…恋っていう厄介な感情のお陰でAちゃんの心内は読めないんだね…？
「ヘタレがもうひとり増えた。」
ー俺は卒業しました。
「ははは。だといいけどね？」
笑い合って翔ちゃんとの電話を切った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
