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ハラハラしながら見ていると、涼介くんはものすっっっごい低音で、
「……はァ?…」
そう言った。
サングラスだからどんな表情なのかはわからない。
それでも殺気すら感じるくらいの冷たいオーラをまとっていて。
まるでいつか出演した映画みたいだった。
これには相手もたじろいだ。
「消えろ、カス」
続けて、涼介くんがそう言い放ち、掴んでいた腕を乱暴に離すと、
「んっだよ!」
男性はそう言って去って行ってしまった。
「…………」
私は怖さと、バレずに済んでよかったという思いと、助けてくれた嬉しさがごちゃまぜになって、何も言えずに、ただ涙が溢れそうになった。
「あり、がと、ゴザイマス」
本当は、涼介くんに抱きつきたいけど、ここでそんなことはできない。
ぺこりとおじぎをしながらカタコトで言って、駅へ歩き出したのと、
「…、っ」
涼介くんが私の名前を呼ぼうとしたのはほぼ同時だった。
目尻に溜まった涙をぬぐいながら目を拭い、先を急ごうとすると、すぐさまスマホが震えた。
見てみると、それは涼介くんからのLINEで。
涼介怖い思いさせて、ちゃんと守ってやれなくて、本当ごめん
まさかの内容に慌ててメッセージを打つ。
Aなんで涼介くんが謝るの?
A怖かったけど、助けてもらったからもう大丈夫だよ。ありがとう
そう返すと、
涼介助けるのなんて当たり前だから
とだけ返って来た。
…涼介くん…。
じんわりと心があったかくなる。
離れたところにいることが少しだけもどかしいけど。
あとでたくさん話そう。
そう思っていると、ようやく涙の乾いた私の瞳に、小さな私鉄の駅のネオンが映り込んできた。
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作者名:みあ | 作成日時:2018年7月30日 9時