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「…だめだって…!」
そう言うものの、振り払うこともできずうつむくしかない。
「大丈夫だって。俺この道で人とすれ違った記憶無いもん」
「………」
顔を上げると、これまた優しい笑みでにっこり微笑む涼介くん。
…メガネって、得だよね。
3割り増しで誠実そうに見えちゃう。
「…突き当たりの曲がり角まで、ね」
恥ずかしくて、うつむいて言うしかなくて、そんな可愛くない言い方しかできないことが悔やまれる。
「うん!…あ、Aの手、ちっさ」
そうやってふふって笑う彼の方がよっぽど可愛げがあるよね。
「そんなことないよ〜。涼介くんだってあんまり変わんないでしょ」
「うっそだぁ、ほら見てみ?」
歩きながら、繋いだまま手を挙げられる。
しなやかで、でもたくましさのある涼介くんの手と、私の手が重なった。
「一回りくらいしか変わんないじゃん」
「いやいや、俺の方が充分大きい!」
「うん、、、大きいね」
何をもって“充分”なのかよくわからないけど、そういうことにしておく。
こういう、変に言い張るところ?は、年相応だなって思う。
ぴゅう、と北風が吹き、出していた手を引っ込めようとすると、ぐいっと手を引っ張られ、そのまま涼介くんのライダースのポケットに収められた。
「………!」
足をふらつかせながら涼介くんにひっつく私。
そして横から、ボソッとつぶやく声が聞こえた。
「やっと、くっつけた」
「………うん」
普段車でしか出かけないから、手を繋ぐなんてしたことなかったし、できないものだって諦めてた。
だから、本当はすっごく嬉しい。
私は、涼介くんの手の温もりを感じながら、ひとときの幸せに浸った。
何の変哲も無い住宅街をただ歩いてるだけなのにね。
涼介くんの温もりを、二人で歩きながら感じることができるって、こんなに幸せなんだ。
そしてしばらく進むと、曲がり角がやって来て。
そこを曲がる前に、手を離した。
ここからは寂しいけど、万が一のために別行動。
「じゃ、後からついてきてね」
そう言って先を歩く私に、涼介くんは控えめにウィンクして見せた。
…もう。
そゆことすると、キラキラ王子様がダダ漏れなんだって。
涼介くんはさらっとそういうことするけど、どうにも慣れることはなくて、未だにドキッとしていることは言わないでおこう。
…とにかく。
どうかこの先、家までバレませんように。
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作者名:みあ | 作成日時:2018年7月30日 9時