第五夜 ページ6
．
「……君と、同じだよアラジン。」
僕がそう一言口に出すと、アラジンはやっぱりというような確信した表情を見せた。
「……ねぇ、お兄さんの名前は何だい？教えておくれよ。」
アラジンは此方に近付くと、逃がさないという意思表示なのか僕の服の裾を掴んだ。
「名前。」
僕がそう無表情で答えると、アラジンはその縋るような表情を崩さずに僕の裾をよりいっそう強く掴んだ。
暫く、僕とアラジンの間に沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのはやはりアラジンの方であった。
「……ねぇ、お兄さんは一人なのかい？」
何故そんなことを訊くのかということよりも、僕は早くアラジンから解放されてあの海へ向かう足を早めたかった。
「嗚呼、僕は南に用があるんだ。」
離してくれないか？という意を込めて、アラジンを見る目を細めて見下ろす。
「……それなら、僕と。」
「悪いけど、僕はこの旅を一人で終わらせたいんだ。」
アラジンが言おうとした言葉に重ねてそう述べる僕の瞳は冷たい。
海に到着したら、きっと泣いてしまうような気がしたから。
そんな情けない顔は誰にも見せたくなかった。
当然、こんな子供にも。
だいたい、他人は嫌いだ。
故郷の人々も、僕の母が不治の病だと聞くと心配するどころか異様に避けるようになった。
だから、僕の母が病気だということを知っているのは本当に故郷の人だけだ。
アルバイトの時も結構遠くに行っていた。
天涯孤独の僕はこれから一人で生きていくしか道は無い。
何故なら、僕の事情を知ったらみんな離れていってしまうから。
どうせ、他の人もそうだ。
きっと、アラジンも。
信用できないよ、他人なんて。
この瞬間、僕の心の中が一気に冷めたような気がした。
醒めたわけじゃない。
本当に、心の中が一気に冷たくなったような、そんな気がしたのだ。
．
．
「……ごめんね。」
子供をあやすように、一言優しい声音でそう呟いた僕は立ち尽くすアラジンを置いて海への道を急いだ。
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第五夜、いかがでしたか？
取り敢えず、ここまで読んでくれた読者様、有難うございます。
良ければ、コメント＆評価、宜しくお願い致します。
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サリナ - めっちゃ泣けました！私もこんな風な人になりたかったです(T-T)これからもドンドン書いてください!!応援してます！ (2019年3月8日 9時) (
レス) id: 238800b61c (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - もっちー。さん» ありがとうございました！これからも楽しみにしてます！ (2017年6月29日 0時) (レス) id: c128289cdd (このIDを非表示/違反報告)
もっちー。(プロフ) - いえいえ、解決できて良かったです。これからも何か疑問に思うことなどありましたら、お気軽に。コメント欄にてお待ちしております。これからも、眉目秀麗な彼は五人目のマギをよろしくお願い致します！(*´ω｀*) (2017年6月29日 0時) (レス) id: 518b9adb8c (このIDを非表示/違反報告)
もっちー。(プロフ) - 追記ですが、名前入力は目次の一番下にある欄にて行って頂くといいかと思います。もしかするとですが、上の入力スペースでは反応しないのかもしれませんので、よろしくお願い致します。 (2017年6月29日 0時) (レス) id: 518b9adb8c (このIDを非表示/違反報告)
西(プロフ) - もっちー。さん» すいません！私の勘違いです！私いつも「お名前」欄に名前を打っていたのですが、「name1」の方も使用できるのだと知りませんでした(´・ω・`)次から気を付けます…。お騒がせいたしました… (2017年6月29日 0時) (レス) id: 04ccbcb93a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もっちー。 | 作成日時：2017年3月19日 20時
