叡智の門は開かれない_2 (ページ8)

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……カワイイ！ページ8

「ねえ、もう一回言ってくれる？オレはきちんと『有能だった』ってさ」
「欲しがりな奴だなあ。ああ、お前は有能だったよ。しっかり働いたさ」
　ありがと、と頬を緩ませながらユウリは男の目の前へ立つ。彼の体が、ソファに体重を預ける男の体へ影を落とした。これほど上背のある男だっただろうか。そう感じたのは、立っているか座っているかという差か、今まで彼を直視したことがなかったためか。
「いっこだけ、教えてあげるね」
　その言葉と共に、ユウリの手が男の喉を捉えた。窒息をする直前まで締め上げつつ、しかしへらへらとしたその表情は変わらない。
「オレは『有能だった』んじゃないよ。実は『お利口さん』なんだよね。今も」
「おま、ど、いうつもり、だ」
　飼い犬に手を噛まれたかのように目を見開き――ようやく現実を受け入れたのか、切れ切れに男は言葉を吐き出す。
「わっかんない？やめてよそういうの。君すっごく賢ぶってたじゃん？最後まで貫いてよ、少なくともオレがいる間はさあ」
　すとんとどこかに落っことしたように笑みは消え失せ、代わりに苛立ったような声を出す。
「あとべらべら喋りすぎ。助かるけどさあ。これでオレは仕事を終わらせられたけどさあ――それだと、そっちのほうがまるで『かわいい』みたいじゃん？ねえ？何でオレより馬鹿なワケ？オレが一番馬鹿じゃないとさあ、一番可愛くなれないじゃん！オレが！」

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