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＊ ページ20
「聞いて、聞いてくださ、聞いて、聞け、聞いてくれよ！」
「聞いてたまるものか。なぜ、なぜお前だったんだ。お前が、お前なんて、お前の、何が。何がいい。何が、どこが、お前を選ばせたんだ！」
苦し気にトーマンの顔が歪んだ。駆け足のように小さな声ですみません、と呟いた。その刹那、彼の手がカイの腕を捉えた。その腕から鈍い音、間もなくカイの口から獣のような咆哮が飛び出す。
「俺は！ 殺してなんかいない！ ――俺だって、カナタに、生きていてほしかった」
カナタ。カイの、妹の名前だ。
驚くだろうか。また怒るだろうか。それとも、涙を流すだろうか。
カイの反応は、トーマンの予想とは全く違っていた。
「知っていたさ」
代わりに、トーマンの目が見開かれた。
「俺がお前の、お前らのことを分からないわけがない。でも。――それでも！」
その瞬間、カイは再びトーマンに掴みかかり――彼がひっそり持っていたナイフを奪い取った。呆然としていたトーマンは我に帰るが、かすかに間に合わなかった。脳が判断を下すより、脊髄が判断を下した方が動きは早いのだ。
「死ね。俺は、お前を――」
遠く。
どこかで、サイレンが鳴った。
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