92.「うめちゃん」 ページ10
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誠「俺はね。麻里と二宮を丸ごと潰すんだよ」
誠「麻里を手放すなんてそんなバカなことしないよ」
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あははは！って笑い声はもう、部屋だけじゃない。
私の脳内にまで痛いぐらい響いて私の命を削ってゆく。
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青山莉緒と彼の記事。麻里から貰っただろ？あれは俺が念のため撮っておいた写真だよ。莉緒には許可は得てる。
俺はね、麻里と共謀する「ふり」をしてる。麻里に
「お互い協力しよう。あの二人を引き離せば、俺はAを、麻里は彼を手に入れることができる。お互い手に入れたら別れよう」って持ちかけた。
あぁ、もちろん嘘だよ。
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麻里はね根っからのお嬢様だから。俺に騙されてるなんて思ってもない。だから俺の言う通りに動いてくれた。
カズくんって呼んでるんだっけ？カズくんだってAをネタにしたら簡単だったなぁ。
あっさり離れてくれたんだから。
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仕上げはこう。
Aには悪いけど、「カズくんと莉緒」が写ってるあの記事と「カズくんとA」が写ってるあの記事を
別々に、違うマスコミに流して同時に報道してもらう。そうしたら君の大好きな「カズくん」は二股やら、飼い主やら世間から沢山のバッシングを受けるよね。
そうしたらもう終わり。麻里の父親が自分の愛娘をそんな男に渡すわけがない。どうしたって結婚は無理。ミンテンドウに傷がつく。
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ミンテンドウは二宮を切る。そしたら麻里は俺を選ぶしか手立てはなくなる。
大丈夫。安心してよ。
報道された後のAのことは俺が守ってあげるから。
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誠「…だから、ほら。俺のとこに帰ってきなよ」
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誠「“うめちゃん”」
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くちびるが、そういやらしく動いた瞬間。
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ぽろん、と一粒だけ。たった一粒だけ
テーブルに私の涙が重力に従って落ちて、水たまりを作る。
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和也『うめちゃん』
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和也『うめちゃん、こっちおいで』
和也『うめちゃん、一緒に寝る？』
和也『うーめちゃーん』
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決まってる。
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「…………で」
誠「え？」
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私の腹のなかは、もう決まっている。
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「うめちゃんって呼ばないで！」
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そう、決まってる。
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