87.契約更新 ページ5
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いつも思う。
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和也「あーサッパリしたー。いいお湯だったー」
「カズの部屋と全く同じお湯だけどね」
和也「あれ？俺のラジオ聴いてないの？俺、風呂は水素水なの」
「はいはい、あのホラ吹きラジオね…」
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お風呂上がりのカズは無駄に色っぽい。
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若干火照った白い肌。ぬれた黒髪。前髪はだらしなく目にかかっていてわんころみたいにバスタオルでごしごしと乱暴に髪の毛を拭う。
それからビールを飲むたびに動く喉仏は、ちょっと反則だと思う。
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和也「うめちゃん、ちょっと」
「なに？シャワー浴びたい私も」
和也「うん。ちょっとでいいから話があんの。隣座って」
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人の話聞く気ないな、この人。
はあって溜息を吐いて、またソファに座り込む。テレビは消したから静かなこの部屋に
二人の息遣いだけが響く。
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「なに？話って」
和也「契約したよね、俺たち」
「したね」
和也「契約書に追加したいことがあるんだけど」
「…追加？」
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和也「なにかあったら絶対俺に言って」
和也「俺になにがあってもブレないで」
和也「俺は大丈夫だから」
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はじめて。
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「………わかった」
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はじめて、こんな真剣な余裕のないカズを見た。
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和也「契約違反は賠償金五億円ね」
「ケタがおかしいんだけど…」
和也「違反しなきゃいいの」
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さ、風呂入ってきな。
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くふふって笑ってタバコに火をつけたカズを背に、すぐにシャワーを浴びてドライヤーで髪の毛を乾かしたりして
全てを終えてリビングに戻ればカズの姿はもうなくて。
そっ…と寝室の扉を開くと微かに灯るランプの下、既にベッドの中に入ってるカズ。
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オレンジ色の灯りに照らされて、そっと隣に潜り込めばぎゅっと抱きついてきた人たらし。
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「…起きてたの？」
和也「んふふ。いい匂いする」
「私抱き枕じゃないよ」
和也「俺のだきまくら」
「どうしたの？いたせりつくせりだね、今日」
和也「こういう日もあんのよ」
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人の気も知らないで。
おやすみ、と言えばおやすみ、と言ってくれる。
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その夜は、珍しく深い眠りに就けた。
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88.別れはそう、突然にやってくるものであり、傷は唐突につくものである。→←86.余命一週間の恋
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