108.ありがとう。さようなら。 ページ26
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好きだった。
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誠『はじめまして。小野です』
『はじめまして…、梅宮です』
誠『名前は？』
『え？だからうめ…』
誠『下の名前(笑)』
『あ…、Aです』
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陽だまりのように笑う、あなたが好きだった。
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「私には、私の人生がある」
誠「…」
「最初はやっぱりちょっと、誠くんを陥れるのは抵抗があって。それはもちろん好きだったから」
誠「…」
「でもあなたがしてきたことは、麻里さんのことも青山さんのことも、ヒナタちゃんも、私のことも。侮辱する行為に値する」
誠「……」
「私はあなたが好きだった。でももう好きじゃない。顔さえも見たくない」
誠「…」
「もう、これ以上私の人生に土足で踏み込まれたくない！」
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ーーーー…きっと。
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和也『…今度、映画やるの。見てね？』
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初めてエレベーターで出会った時から
私の人生は変わり始めていた。
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和也「……謝れよ」
誠「…申し」
和也「俺じゃねえよ。Aに謝れっつってんだよ」
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誠くんと別れられなかった自分。
一歩踏み出すのが怖かった、自分。
自分自身で、傷を何個もつけてきた自分。
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そんな私に、どんな理由であれ
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ーーー…和也『俺が助けてあげよっか。』
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手を差し伸べてくれたのは、カズだ。
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誠「ーーーー…申し訳、…ありませんでした」
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和也「くぁー！ビールがうまい！」
「明日もドームなんでしょ？飲みすぎないようにね」
和也「わーってるよ。ガキじゃないんだから」
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ーーー…誠くんは。私に深々と頭を下げてから、まるで逃げるようにこの部屋を出て行った。
自分が私に与えたはずの、この部屋を。
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「…ありがとう、カズ」
和也「ん？別に？どってことないよ、こんなの」
「…あのね、お願いがあるの」
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私は決めていた。強くなると。
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和也「ほら、飲もう」
「うん。あのね？」
和也「だぁから、なぁに？」
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わたしは
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「契約を解消したいの」
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決めていた。
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